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アニメ『かげきしょうじょ!』の世界、元宝塚歌劇団の娘役にはどう見える?

まいしろエンタメ分析家
(写真:イメージマート)

アニメ『かげきしょうじょ!』が話題だ。

大正時代から続く「紅華歌劇団」の劇団員を育てるための「紅華歌劇音楽学校」に通う学生たちを描いた本作品。

モデルとなっているのは、言わずとしれた宝塚歌劇団とその育成学校である宝塚音楽学校だが、実際の宝塚音楽学校はどういう世界なのだろうか。

今回は宝塚歌劇団の元花組・娘役を務めた瞳ゆゆさんに、実際の宝塚音楽学校での生活について伺った。

画像はご本人提供。
画像はご本人提供。

■倍率が20倍にもなる入学試験

ーー「かげきしょうじょ!」は、歌劇の舞台を目指す少女たちをモデルにした作品です。そもそも実際の宝塚音楽学校にはどうやって入学するのでしょうか?

面接やバレエの試験を受けます。三次試験まであって、倍率は20倍ほどです。

ーーかなりの狭き門ですね! 受験までにどれほどの準備が必要なのでしょうか?

人によって様々です。小さい頃からバレエを習っている子もいれば、1年未満の準備で入学される方もいますね。

ーーどういうきっかけで受験される方が多いのでしょうか?

私の場合は、全国ツアーの公演を観て受験しようと思いました。

両親の影響で受験される方もいますが、舞台を観て自分から入りたいと思った人の方が多いんじゃないかと思います。

ーー試験で特に難しい科目などはありますか?

二次試験の「新曲視唱」は、対策しないと難しいです。

新曲視唱とは30秒で楽譜を見て、その場で歌うという試験です。ピアノを習っているだけだと難しいので、苦労する受験生は多いですね。

ーー試験ではどういった方が合格されていくのでしょうか?

見た目が華やかな子や、まじめな子が多いですね。

あとは、受験してから2年で宝塚舞台に出ていくので、その間、真剣に芸事に取り組める吸収が早い子が求められます。

バレエを少ししかやっていなかったとしても、年数に応じてきちんと成長していけるかが見られていますね。

ーー『かげきしょうじょ!』の作中では性格も合否の基準として描かれています。

確かに、明るい子や前向きな子は多いですね。面接での印象は大きいと思います。

■「かげきしょうじょ!」の登場人物のバックグラウンドは事実に基づいている

ーーここからは「かげきしょうじょ!」の登場キャラクターについてお聞きします。主人公の奈良田愛はアイドルグループの出身ですが、実際こういった舞台関係の学生さんは多いのでしょうか?

多くはありませんが、いらっしゃいます。宝塚女優の娘さんや、歌舞伎役者の娘さんもいますね。

(奈良田愛のように)アイドルから転向したのは聞いたことがありませんが、子役の方はたまにいますよ。

ーー奈良田は歌劇をほとんど見たことがありませんが、実際こういった学生もいるのでしょうか?

なかにはいらっしゃいます。バレリーナを目指すには身長が高すぎたため、先生に宝塚を勧められて受験したという子もいましたね。

ーー同じく歌劇をあまり知らないまま入学してきたのが、奈良田のルームメイトである渡辺さらさです。彼女は奔放な性格ですが、非常に背が高く、演技の才能があるとされています。

受験生のほとんどは、身長が160cm~165cmあたりなんですね。

なので、男役になることが期待できる168cm以上の受験生は、劇団にとって欲しい存在ではあると思います。

ーー男役は、やはり学生の間でも志望者が多いのでしょうか?

そうですね。ファンも男役の方が多いですし、私も身長が高かったら男役になりたかったです。

ーーさらさは、『ベルサイユのばら』のオスカル役をやるのが夢だと宣言しています。

新作の舞台が多いので、「この役をやりたい」というのはあまり多くないですね。

それよりは「〇〇さんのようになりたい」という子の方が多いと思います。やはり、スターに憧れて入学してきた子は多いですね。

ーー沢田という双子で合格した子たちもいますが、実際に双子が入学することはあるのでしょうか?

ありますね!私の後輩にも何組かいます。三姉妹で合格されてる方もいますよ。

入ってからは、組は分かれることが多いです。

ーー作中での猫写が、想像以上に現実の状況と近くて驚きます!

■宝塚音楽学校では朝の5時に起きて1時間半の掃除をする

ーー学校の仕組みや普段の様子についてもお聴きしたいです。作中では、さらさが朝の5時に寝坊しそうになるシーンがありますが、実際はこんなに朝は早いのでしょうか?

早いです(笑)。お掃除にすごく時間をかけていて、1時間半ぐらい掃除をします。

ーーそれは夜何時頃に寝ているのでしょうか......?

夜10時ぐらいに帰ってきて、レッスンをしてから12時ぐらいに寝ることが多かったですね。

ーーすごいですね。学校生活で特に人気だった授業はありますか?

宝塚のスターが、(引退後に)音楽学校の先生をされていることがあるんです。そういった先生の授業は人気ですね。

紫苑ゆうさんという星組の元トップの方が演劇を教えていたり、若央りささんという元スターがジャズダンスを教えていたり、それはやっぱり人気があります。

ーー確かにそれは受けてみたいですね!他にはどんな授業があるのでしょうか?

バレエ、ジャズ、タップダンス、日本舞踊などがありました。

座学もあるんですけど、朝も早くてレッスンも多いので、椅子に座ると寝ちゃうんですよね(笑)。

ーー作中では、学校の行き帰りの通学路でファンの方にお手紙を渡されるというシーンもあります。

2年目になればあると思います。年に2回ほど学校の発表会があって、そこで見つけてくださるファンの方がいらっしゃるんです。

人気のある子もいますが、けっこう(人気が)ばらけることが多いです。

ーー本当に通常の中学・高校の生活とは違う学園生活を送られているんですね!

■初めて観るなら華やかな作品を選ぶとよい

ーー学生さんたちの卒業後についてもお聞きしたいです。「かげきしょうじょ!」では学校を卒業した学生さんは、全員舞台に立つことになります。

宝塚歌劇もそうです。小さい公演は選抜メンバーですが、大きい公演は全員出演しますね。

ーー役はどうやって選ばれるのでしょうか?

オーディションなどはなくて、劇団(の運営)が決定します。「私はこの役なんだ」と思いながら毎回やり遂げていますね。

ーーすごいプロ意識ですね!

(宝塚には5つの組があるが)組分けも各組のプロデューサーが決定します。

スターもそうで、初めから目立っている方が多いです。

ーー作中で「歌劇はスターシステムを取っている」というセリフがありますが、これは実際もそうなのでしょうか?

トップスターにあった作品にするというのはあると思います。ダンスが好きなスターさんであれば、ダンスのシーンを多めにするといった演出はしていると思いますよ。

ーー想像以上に劇団の影響が大きいことに驚きます。各役者さんのお名前(芸名)も劇団が決定しているのでしょうか?

学校の2年目の夏休みの宿題で考えます。

第三希望まで出して、その中から劇団側が選びます。すべてダメだと、再提出になりますね。

ーー学校の宿題なんですね! 舞台を引退した後についてもお聞きしたいのですが、宝塚を引退された方はどういったお仕事に就かれることが多いのでしょうか?

少し前までは、芸能界に入られる方が多かったです。

もちろん、今もそういう方は多いですが、最近ではヨガやピラティスなどのインストラクターの仕事をされる方が増えていますね。資格を取って転身される方が多いです。

ーー時代によってセカンドキャリアも移り変わっているんですね。最後に、宝塚を観たことがない方に向けて、鑑賞のポイントやおすすめの作品があればお聞きしたいです。

宝塚といえば、(お芝居の後にある)レビューが特徴です。なので、初めて観るなら、やはり華やかなレビューがついている舞台の方がいいと思いますよ。

個人的には、王道ですが『エリザベート』が好きですね。小さい頃に観た印象と、大人になってから観た印象も違っていて、いつ観てもすごくいい作品だと思います。

ーー宝塚になじみのない人にもわかりやすく、大変おもしろかったです!本日はありがとうございました!

エンタメ分析家

エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはエキサイトニュース、デイリーポータルZなど。アート作品のマッスルを延々と解説する初書籍『アート筋トレでスリム美体に!』が発売中。漫画・アニメ・ゲームなどについても書きますが、音楽と映画が特に好き!

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