4月8日にハリー・ポッター魔法ワールドの最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が公開される。

ハリー・ポッター魔法ワールドには、多くの魔法動物が生息している。危険な生物から賢い生物まで存在するこの世界は、専門家から見てどんな世界に映るのだろうか。

今回は、どうぶつ科学コミュニケーターとして活躍する大渕希郷(おおぶち まさと)氏に、専門家から見たハリー・ポッターの世界を語ってもらう。

※記事内に一部刺激のつよい虫の写真を含みます

筆者作成。特記ない限り以下同。
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■ホグワーツは危険生物を飼いすぎている

ーー今回は『ハリー・ポッター』シリーズに出てくる魔法動物について、動物専門家の観点からお伺いしたいです。

そもそもの疑問なのですが、ホグワーツ魔法魔術学校ではたくさんの危険な魔法動物を飼っています。たくさんの子どもが通う学校で、危険生物を飼うというのは専門家からみて問題ないのでしょうか?

それは僕も思いました。おかしいですよ。飼いすぎです。

ーーやっぱりそうなんですね。

まず、いまの日本ではペットとして特定動物(人に危害を加える恐れのある生物)を新しく飼うことはできません。

ただ、専門学校などで、教育を目的としてワニなどの特定動物を飼うことはあるんです。

ただ、許可が下りた場合でも、施錠はもちろん、「セカンドストップ」を始めとした飼育の基準があります。これはひとつめのドアを突破しても逃げられないように、もうひとつドアを設けるというものですね。

ホグワーツの場合は、さすがに愛玩ではなくて、教育目的なのかなと思うのですが、管理に問題がある気がしますよね。

ーー歴史も長いのでいろいろあるんでしょうか……。

そんな管理が甘いホグワーツですが、その最たる例が『秘密の部屋』に登場したアクロマンチュラという大きいクモのアラゴグです。

(マグルの世界だと)一番大きいのはゴライアスバードイーターというクモです。

大きさは20センチほどで、手のひらより大きいぐらいですね。

写真:Shutterstock/アフロ

ーーゴライアスバードイーターを見た後にアラゴグを見ると、比べものにならないぐらい大きいですね。

そうですね。ただ、実際にアラゴグという名前のクモもいます。というか出来ましたという方が正確ですね。

『ハリー・ポッター』が人気になった後、見つかった新種の学名としてつけられました。

ーーそんなユーモアのある学名が……!

新種の生物になにかしらの作品の名前をつけることは意外と多くて、『ハリー・ポッター』だけでもけっこうあります。

ーー新種の生物というのは、どれくらいの頻度で見つかるものなのでしょうか?

一概にはどのくらいの頻度でとは言えないです。ただ、​​自然の調査というのは、国の情勢がかなり整っていないとできないんですね。

なので、たとえば長らく続いていた紛争が終わるなどして、ようやく調査に入れた地域で、新種が一気に見つかるということがあります。

面白い例としては、学者がとある地域で食べさせてもらったトカゲが新種だったという例もありましたね。

ーーそんな裏事情があるんですね。もっといろんな地域で気軽に自然の調査ができるようになって欲しいですね。

■ゴリラやチンパンジーはあいさつが必要

ーー続いて、『アズカバンの囚人』で大活躍したヒッポグリフという魔法動物です。

ヒッポグリフはプライドが高く、最初にお辞儀をしないといけません。実際にこういう礼儀を重んじる動物はいるのでしょうか?

ゴリラやチンパンジーのような社会性がある動物は、それぞれのあいさつを持っています。失礼な態度を取ると怒られることはありますね。

ーー我々も森でゴリラに出会ったら、きちんとあいさつする必要があるのでしょうか?

そうですね。ゴリラに会ったときは、鼻で「グフーム」と言わないといけません。

チンパンジーの場合は「ホーホー、ホーホー」といいますね。

ーー万が一のために覚えておきます。

ゴリラについては、たまたま森でゴリラに出会って、びっくりしてあいさつを忘れた研究者が突き飛ばされたという話を聞いたことがあります。

ただ、次に会ったときにちゃんと「グフーム」と言ったら、向こうもあいさつしてくれたそうです。それ以降は、近くにいても警戒されなくなったそうです。

ーーあいさつは種族を超えるんですね!

同じく『ハリー・ポッター』でよく知られる生物としてバジリスクというヘビがいます。目を合わせるだけで、相手を即死させることができます。

これはどうしようもないですよね。

偽物の目を描いて、そっちと目を合わせてもらいながら飼育するしかないと思います。

リスクはゼロではありませんが、少なくはできると思います。

ーーバジリスクはけっこう狡猾さのある生物ですが、実際のヘビも性格に問題があるのでしょうか?

ヘビは知能がどれほど高いのか、まだわかっていない分野なんです。

でもヘビに近いオオトカゲの仲間などですと、「人間がハトにエサをあげるタイミングをねらって、エサに夢中になっているハトを襲う」といった学習能力は持っています。

そういう動作から狡猾というイメージが来ているのかもしれません。

ーー魔法動物も、意外と我々マグルの世界に住む生物と共通点があるんですね!

■生物が絶滅する理由は「人間活動の肥大化」

ーー『ハリー・ポッター』ではクィディッチという箒を使ったスポーツが人気です。

そこで使われる「スニッチ」というボールは、もともとボールではなくて生きた「スニジェット」という鳥が使われていました。スポーツのせいで数が減り、現在は保護活動がされているそうです。

見た目は完全にキーウィですね。

写真:ロイター/アフロ

スニッチの歴史は、かなりクレー射撃に似ているなと思います。クレー射撃ももともとは生きたハトを使っていました。ハトの代わりに、ハトに見たてた素焼きの皿を使う射撃になったわけですね。

ーースニッチのように絶滅寸前になった生物や、絶滅した生物はマグルの世界にも多いですが、生き物が絶滅する理由でもっとも多いのは何なのでしょうか?

もっとも簡単にいうと「人間活動の肥大化」です。人が増えすぎたことにより、自然開発が進んですみかを奪ってしまったり、食用などに捕まえすぎちゃったり、そういったことから絶滅に繋がっていきます。

特に、虫や魚のような変温動物を飼っているとよくわかるんですが、彼らは野生の環境を再現しないと生きられないんですよ。野生動物は、程度の差はあれ、基本は同じです。

野生動物は、犬猫やウシほか家畜のように、人が作った環境に耐えられるように進化してきていないんです。なので、人間活動によって本来の環境が失われると絶滅していきますね。

ーー新種の発見や絶滅の理由まで、知らなかった動物の世界について学ぶことができてよかったです。本日はありがとうございました!

おまけ。
おまけ。

大渕さんの『ファンタスティック・ビースト』に出てきそうなカバンを改造した標本ケース。今後、仕事で使っていく予定だそうだ。

※本記事ではワーナー・ブラザーズ公式サイト「魔法ワールド特集」に倣い、登場するすべての生き物を「魔法動物」として表記しました。マグル世界での分類が定かでない生き物も存在しますがご了承ください。