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「1人1台端末更新費用」での萩生田文科相発言を信じていいのか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 1人1台端末の更新費用について萩生田光一文科省は9月4日の閣議後記者会見で、「年度内に(1人1台端末を)整備するまでのあいだに、方向性を示していくことができるようにがんばりたい」と述べた。「前向きな発言」のようにおもえるが、ほんとうに、そうなのだろうか。

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)で文科省のGIGAスクール構想が一気に加速することになったが、その基本となる「1人1台端末」については自治体を中心に不安が消え去っていない。2023年度を予定していた1人1台の実現を今年度末に文科省は前倒ししたが、そのための経費を国・文科省が全額負担するわけではない。

 国・文科省が負担するのは情報通信ネットワーク環境施設整備費の2分の1だけで、残りは自治体の負担となる。1人1台も国の補助を超える分は自治体が負担しなければならな。自治体にとっては大きな負担であり、特に予算的に苦しい状況にある自治体にとっては頭の痛い問題でしかない。

 しかも、初期投資だけで終わらないのが「1人1台端末」である。パソコンやタブレットは故障もするし、技術革新ですぐに古くなる。環境設備も同じだ。「更新」を大前提にしなければならない。いったん導入してしまえば更新をつづけないと、「無駄な投資」にしかならなくなる。

 その更新にも、当然ながら費用がかかる。1人1台端末を前提とした授業がつづいていけば、いつまでも更新のために費用を確保しなければならないのだ。そのため年度末までの1人1台端末の実現を文科省は声高に叫んでいるが、二の足を踏んでいる自治体も少なくない。

 そこで萩生田文科相が、更新費用についても「方向性をしめしていく」と発言したわけだ。更新費用について前向きな姿勢を示すことで、更新費を心配して1人1台端末の実現をためらっている自治体の尻を叩いたことになる。

 同日の会見で文科相は、「『(国の)補助金ならやるけれど、(一般財源の)地方財政措置だったらやらない』みたいなことがあってはならない」とも発言している。腰の重い自治体に対する苦言である。

 それは、学校へも跳ね返ってくることだ。文科省がGIGAスクールを推し進めているにもかかわらず、1人1台端末を前提とした授業体制を整えることに躊躇している学校など「あってはならない」と暗に言っているにすぎない。

 つまり、学校と自治体をGIGAスクール構想に追い立てている。ただし、萩生田文科相は更新費用について「がんばりたい」と発言しただけで、「国が負担する」と約束したわけではない。

 その「がんばり」が実を結ぶかどうかは、わからないのだ。実を結ばなかった場合、自治体は大きな費用負担を強いられることになるだろう。そして学校現場は満足のいかない1人1台端末の環境で、成果の上がる授業を強いられることになる。

「掛け声」も大事かもしれないが、それだけで終わらないことを期待したい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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