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文科省は子どもの安全を二の次にするのか、スマホの持ち込み容認の厳しいルール

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 文科省は、中学生がスマホを学校に持ち込むことを認めるらしい。6月24日に開かれた「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」の今年度第2回会合で、これまで原則禁止としてきた中学校へのスマホなど携帯電話の持ち込みを容認する方針を文科省として示したのだ。

 その理由は、「登下校時に緊急事態が発生した場合、生徒が連絡手段を確保できるようにすることが主眼」ということらしい。登下校時に緊急事態が発生する可能性は、どの生徒にもある。それに備えた連絡手段としてスマホが必要というなら、全生徒に持たせるようにしなくてはならないはずである。

 今回の方針は、あくまで「容認」でしかないので、全生徒に持たせよう、というわけではない。オンライン授業を推進するために文科省は、1人1台のタブレットやパソコンなどの端末を普及させようとしている。そのために予算をつけたりもしているのだが、スマホ普及のために予算をつける気はなさそうだ。

 それどころか、持ち込み容認については条件を課している。学校と生徒・保護者とのあいだで、学校での管理方法やトラブルが起きた場合の責任の所在を取り決めることが必要としている。さらには、正しい使い方に関して指導することを求めているのだ。校内での利用制限を行って、教育活動への支障がないよう配慮することも要求するようである。

 容認するといいながら、ルールでがんじがらめにする方針でしかない。そんな面倒くさい条件づくりが必要になるなら、「持ち込みは許可しない」と判断する教育委員会や学校は少なくないだろう。すでに許可している学校も、「面倒になってきたから禁止にしよう」となる可能性すらある。容認どころか、実際にはブレーキをかけたようなかっこうである。

 スマホの持ち込み容認が「登下校時に緊急事態が発生した場合、生徒が連絡手段を確保」するためなら、生徒の安全に関わることなのだから、オンライン授業のためのタブレットやパソコンよりも重要かもしれない。にもかかわらずブレーキをかけるような方針では、文科省にとって生徒の安全は二の次でしかないのか、といった指摘を受けることにもなりかねないのではないだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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