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英語民間試験延期は萩生田大臣を守るため?

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 来年4月から開始される予定だった大学入学共通テストでの英語民間試験の活用を延期するための調整が始まった、と報道されている。

 延期を検討しているのは首相官邸で、萩生田光一文部科学大臣の「身の丈に合わせて」発言で、「家庭の経済状況や住む地域による格差の問題に改めて注目が集まっており、受験生や保護者の不安を払拭するのは難しいとの判断に傾いている」(『毎日新聞』WEB版11月1日付)からだという。おかしな判断である。

 11月1日には英語民間試験受験に必要な「共通ID」の申請も始まり、すでに準備をしている受験生も少なくないはずだ。ここにきて延期となれば、受験生に与える影響は小さくはないはずだ。もちろん、英語民間試験の実施団体にとっても大問題である。延期が混乱を招くことは、火を見るより明らかだ。

 ただし英語民間試験の活用については、早い時期から疑問の声があがっていた。地域によっては試験会場が遠すぎるなどの疑問があるなかでは、来年4月からの開始は早急でしかなかった。

 にもかかわらず、政府・文部科学省(文科省)は強引に開始を決めてしまった。ますます疑問と反対の声が大きくなるなかで飛びだしてきたのが、萩生田大臣の身の丈発言でもある。

 延期が、疑問や反対の声に応えるという理由なら納得もできる。しかし、この延期のタイミングは、萩生田大臣の身の丈発言の波紋を抑えようとの意図からとしかおもえない。

 いわば、萩生田大臣を守るために、官邸は英語民間試験を延期しようとしているとしか受け取れないのだ。そのために、大きな混乱を招こうとしている。

 英語民間試験に対する疑問や反対の声には耳を傾けようとしなかったのに、萩生田大臣を守るためには大きな混乱も気にせず延期するのは、どう考えても理屈がとおらない。政府に対する新たな不信、大きな不信をもたせることにつながることもまちがいない。

 萩生田大臣を守るためには入試試験などコロコロ変える、それほど政府は入学試験、受験生を軽んじている。それが政府の姿勢であることを、しっかり認識する必要があるだろう。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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