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外国人労働者増のツケを学校現場に押しつける政府の無責任ぶり

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 学校から「日本語教育が必要」と判断されながら日本語がわからず授業が理解できない「無支援状態」で日本の公立学校にかよう外国籍の児童生徒が全国で1万400人もいる、と『毎日新聞』(2019年5月4日付電子版)が伝えている。同紙が文部科学省(文科省)に情報公開請求をして判明したという。そんな無支援状態の子どもたちは、日本に来たことを後悔しているかもしれない。

 2018年6月に安倍晋三首相は経済財政諮問会議で「2025年までに50万人超の外国人労働者の受け入れを目指す」と発表し、早くも12月25日には、「特定技能」という新しい在留資格で外国人労働者を受け入れる出入国管理法(入管法)の改正を成立させている。「特定技能」の制度は今年4月からスタートしており、これによって今後5年間で最大34万5150人の外国人労働者の受け入れを見込んでいる。

 この34万人を超える外国人労働者のすべてが単身で訪日するはずはなく、家族をともなって日本にやってくる人も多いはずで、そうなると公立学校にかよう外国人児童生徒の数も急激に増えていくはずである。その子どもたちにとって日本語が大きな壁になることはわかりきっていることで、授業を受けるためには当然ながら「支援」が必要になってくるはずだ。

 しかし、現状でも「無支援状態」の子どもたちが1万人以上も存在している。『毎日新聞』の情報公開請求に情報を開示しているのだから、文科省も「無支援状態」を理解しているはずである。にもかかわらず、これに対する適切な対応はできていない。地方自治体や学校現場に対応は丸投げ、といった状態でしかない。

 自治体や学校にしても限られた予算と人員のなかでは、じゅうぶんな支援ができるはずもない。つまり、「無支援状態」の解消に必要なのは予算と人である。その予算と人を大幅に増やす気は、政府にはないようだ。外国人労働者増でのツケは学校に払わせようといわんばかりの姿勢である。

 外国人労働者を拡大する措置は早々に実行しながら、それにともなって急増するはずの外国籍児童生徒への支援について政府は、「無策」を決め込んでいるといっていい。そのツケを払わされるのが学校現場なのだが、ただでさえ忙しい教員が外国籍児童生徒の対応をじゅうぶんにできるはずもない。対応ができなければ、責められるのも教員ということになってしまう。

 人手不足だからと安易に外国人労働者の受け入れを拡大し、それにともなう学校現場の混乱には知らん振りを決め込もうとする政府の姿勢は納得できない。無策のツケを払わされる学校現場こそ、いい迷惑である。なにより、日本の人手不足解消のために、無支援状態の日本の学校に放り込まれる外国籍児童生徒は大迷惑だろう。日本政府が日本嫌いの外国人児童生徒を増やそうとしているようなものである。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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