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ランドセル、こんなことまで文科省の指示がないと動けないのか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 子どもたちのランドセルが重すぎるという意見を踏まえて、宿題で使わない教科書などは教室に置いて帰ることを認めるように、文部科学省(文科省)が全国の教育委員会に求める方針だという。

 小学校入学時にランドセルは、日本では定番のようになっている。ランドセルを買わせたい商売に、まんまと乗せられてきたともいえる。

 ともかく、大きなランドセルは、子どもたちにとって大きな負担になっているはずだ。低学年の小さな子にはランドセルの大きさは、いかにも不釣り合いでしかない。そこに教科書やノート、筆箱にいろいろな道具をぎっしり詰め込んでいるのだから、かなりの重さである。

 いまに始まったことではないのだから、もっと早くに見直されてしかるべきだったはずだ。遅すぎるとはいえ、見直しの兆しがでてきたことは歓迎できる。

 ただし、なぜ文科省のかけ声なのだろうか。重いランドセルが子どもたちの負担になっていることを誰よりも承知しているのは、学校現場ではないのか。学校現場が率先して、重いランドセル対策をやって当然のはずである。それが、いままで放置されてきている。

 文科省や教育委員会の指示がなければ何もできない、やらない、という学校の体質が、ここにも垣間見ることができる。いちばん子どもたちと身近に接している学校が、子どもたちの身になって考え、実践しようとしていない。

 かけ声をかけた文科省の姿勢も、実にあいまいである。宿題で使わない教科書などを「施錠」ができる机やロッカーに置いて帰ることを認めるように、文科省は求めているそうだ。

 しかし、「施錠のできる机やロッカー」の設置予算を文科省自身が調達してくる気はなさそうだ。「それぞれの学校でアイデアを出し合って対応して欲しい」というのが、文科省のコメントである。言うだけいって、あとは現場に丸投げである。いつもの文科省のやり方だ。

 はたして、子どもたちが重いランドセル無しに登校できる日は来るのだろうか。「言うだけは言った」で終わらないことを願いたい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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