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教職員の処分者が増えているが、氷山の一角でしかないのか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

「あんなものは氷山の一角でしかないよ」と、首都圏の中学で教鞭をとっていた元教員がいった。「あんなもの」とは、国や自治体が公表する処分をうけた教職員の数のことである。

 文部科学省は12月27日、公立学校教職員の2016年度人事行政状況調査の結果を公表した。それによれば、懲戒処分や訓告を受けた教職員は8038人と、前年度に比べて1718人も増えている。

 前年度比増とはいえ、先の元教員の指摘を信じれば、「氷山の一角」でしかないことになる。実態は、処分をうけるべき教職員の数はもっと多いことになる。

 なぜ公表される数字が氷山の一角でしかないのか、その理由を元教員は「問題があっても表にださず、内輪で片付けてしまうのが学校や教育委員会の体質だから」と説明した。

 もちろん、なんでもかんでも処分すればいい、というものではない。処分が改善に必ずしもつながるわけもでない。処分だけで解決しない問題も多い。不当な処分もありうる。

 問題は、公表される処分者の数が氷山の一角でしかないのが「問題が公になることで、校長など管理者が自分の責任を問われたくないから」(先の元教員)という後ろ向きの理由になってしまっているところにある。監督者が自分の責任を避けようとするのは、学校だけでなく「組織の病」といえる。

 だからといって、「仕方ない」ではすまされない。「隠す」ことが日常になり、そこだけに力を注いでいる組織は、活力さえも失ってしまう。問題もなくならず、逆に増えていく。そういう組織が、子どもたちの成長をサポートできるわけがない。

 教育改革が叫ばれて久しいが、そうした学校や教育委員会の体質にまで目を向けた改革でなければ、教育の問題が改善していくわけがない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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