保育の無償化、いちばん喜ぶのは小池知事

(写真:アフロ)

 衆議院選で安倍晋三自民党総裁(首相)が大きく掲げたのが「幼児教育・保育の無償化」の公約だったが、これで政府・自民党は大騒ぎ。その一方で、一人ほくそ笑んでいるのは、安倍首相に反旗を翻した小池百合子知事のようなのだ。

 衆院解散を表明した9月25日、安倍首相は「2020年までに3歳から5歳まで、すべての子どもたちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。待機児童解消を目指す安倍内閣の決意はゆらぎません」と断言した。しかし完全実施には巨額の予算を必要とするだけに、選挙後の11月初めには「無償化の対象に認可外保育施設は含まない」との報道が流れた。

 児童福祉法に基づき国が定めた設置基準をクリアして都道府県知事に認可された児童福祉施設が認可保育所で、それ以外が認可外保育所となる。認可外保育所には東京都が独自に定めた基準で保育所として認めている認証保育所も含まれるが、認可保育所にくらべて基準が緩いため、民間でも参入しやすく、現在までに東京都内に633施設があり、待機児童解消に大きな役割をはたしている。

 ただし、認可保育所にくらべると施設面で劣るうえに、民間の経営となるため保育料も高い。保育料が高ければ子どもを預けるほうは二の足を踏むし、子どもが集まらないとなれば新たな認証保育所も誕生しにくい。東京都の待機児童問題が解消しないのは、ここにも理由があるのだ。

 しかも、問題は深刻になってきている。厚生労働省が発表している2017年4月1日時点での暫定推計によれば、全国の待機児童数は約2万3700人で、うち東京都は約8900人で全体の38%までを占めている。原因のひとつは東京都の出生数の多さで、東京都が今年1月に発表した2015年における都内の出生数は11万3194人で、前年にくらべて2565人の増加となっている。少子化と言われる世の中の動きとは逆行しているわけだ。

 東京都に流れ込んでくる人口も増えている。総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告 2016年結果」(今年1月発表)によれば、東京都特別区部(23区)だけでも5万8207人の転入超過となっているのだ。人が増えれば、出生数も増えるのが自然である。

 つまり、かなりの数で保育所を増やさなければ、東京都の待機児童問題は解決しないのだ。しかし設置基準の厳しい認定保育所を増やのは容易ではないし、認証保育所も前述した理由でなかなか増えていかない。「2019年度末までの待機児童問題解消」とした小池知事の公約も、この現実を前に足踏み状態なのだ。

 安倍首相の無償化が認定外保育所を対象にしないとなれば、小池知事は難題を抱え込んだままとなる。

 ところが、「認定外保育所は無償化の対象外」との報道が流れるやいなや、たちまち不満の声が沸き起こった。認定保育所から漏れていること自体に、大きな不満がある。そのうえ無償化の対象からも外されるとなれば、黙っていられるわけがない。

 あまりにも不満の声が大きいため、政府・自民党としても方針を変えざるをえなくなってしまったらしい。 自民党の「人生100年時代戦略本部」は11月22日、党本部で会合を開いて、「幼児教育・保育について3~5歳児では認可外保育所も含めた無償化を柱とする提言をまとめた」(11月23日付『産経新聞』電子版)のだ。

 認可外も無償化の対象になれば、保育料を気にしなくていいので、東京都が認めた認証保育所への入所希望者も増えるにちがいない。入所者が見込めるとなれば、認証保育所の設置にも加速がつく。

 東京都の待機児童問題も、一気に解消する可能性がでてくる。衆院選では安倍首相に大敗した小池知事だが、ここは安倍首相に助けられて公約をはたすことになるかもしれない。笑いが止まらないはずである。

 ただし、自民党の戦略本部は認定外も無償の方針をだしたものの、財源という大きな問題がある。ほんとうに実現するかどうかは、まだ不明瞭な部分が多い。

 とはいえ完全無償化が実現すれば、小池知事は公約をはたすことができる。実現しなくても、批判の矛先を安倍首相に向けさせることができる。どっちに転んでも、小池知事にとっては嬉しい事態といえそうだ。