グッドデザイン賞を受賞した美大の「出前授業」が訴える教育のスガタ

写真提供:武蔵野美術大学

 この10月、武蔵野美術大学が、優れたデザインの物事に贈られる「グッドデザイン賞」(主催・公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞した。

 グッドデザイン賞は1957年から続く、日本を代表するデザイン賞である。デザインといえば「モノの形」ばかりを頭に浮かべがちだが、その対象とするデザインの領域が商品、建築、ソフトウェア、システム、サービス、人による活動など広範囲におよぶのを特徴としている。

 今回、武蔵美が受賞したのは、美術を使った教育のデザインである「旅するムサビプロジェクト」で、「教育・推進・支援手法」という分類での受賞だった。この分類で美術大学が受賞するのは、初めてのことだという。

 このプロジェクトは、武蔵美の学生が全国の小学校や中学校に出かけて行く、いわば「出前授業」だ。2008年に始まって10年が過ぎようとしているが、もちろん、ただの授業ではない。学生が自らの作品を持ち込み、それを前に子どもたちと対話したり、制作したりなど、かなり踏み込んだ授業を行う。旅するムサビについて、これを始めた同大の三澤一実教授は次のように語った。

「学生に作品を持ち込ませて、その作品について中学生と話し合わせたら、学生がすごく緊張して臨んでいる姿が印象的で、生徒も作者と作品を前にして他の絵を観るとき以上に興味を示している。ちょっとおもしろい関係だな、と思ったのが旅するムサビを始めるきっかけでした。

 学生にしてみれば、作品制作にむかううえでも、教員になって教壇に立つうえでも貴重な経験だし、作者が登場してきて直接対話することで、ただ作品を観るだけでは読み取れないところまで見えてきて、生徒にとっても貴重な体験です。両者ともに、いっそう深い、豊かな理解につながります」

 教科書どおりの杓子定規な「型」にはまった授業に流される傾向が強まってきている。そういう授業では、「教える側」と「教わる側」の重要な関係が抜け落ちてしまいがちだ。せっかく同じ教室にいて顔をつきあわせているのだから、「関係」を大事にしなくては意味がない。旅するムサビの受賞は、「関係」の重要性を問うているのではないだろうか。