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「18歳の反乱」なんて期待できないのでしょうかね、都議選

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「投票に行くの?」と若い人たちに尋ねると、「投票したいとおもう人物や政党がない」という答が返ってくることが多い。都議会選挙の選挙戦がスタートしているが、騒々しいのは相も変わらず立候補者の宣伝カーばかりで、若者の政治熱は冷めたままのようだ。

18歳からの選挙権が認められて初めての国政選挙となった昨年夏の参議院選挙では、18歳の投票率は男性で49.43%、女性が53.01%と、全体の投票率54.70%をいずれも下まわる低調ぶりだった。19歳になると男性で37.31%、女性で42.11%と、さらに下まわった。この結果から言えることは、せっかく選挙権を得たにもかかわらず関心は低い、ということだけである。

昨夏の参院選前には、マスコミも18歳選挙権を大きくとりあげた。18歳と19歳の若い世代が選挙に参加することで、なにやら選挙に新風が吹くのではないかと期待していたのかもしれない。しかし、それは裏切られた。そして、政治に対する若者の無関心を痛感させられることになった。

政治に無関心な若者・・・さまざまなことが考えられるが、「投票したいという人物や政党がない」という理由が最大ではないかとおもわれる。党利党略、さらには私利私欲を優先し、あげくには社会常識を逸脱するような行為ばかりが目立つ政治家たち、その現実を前にしては、「若者が政治に関心をもてないのも無理はない」としか言いようがない。

18歳選挙権の施行を前に多くの学校で行われたのは、「投票の仕方」という形を教えることだけでしかなかった。「駅で自動券売機におカネを入れてボタンを押せば切符が出てきます」と教えるだけで、旅をする楽しさや目的地に行く路線の選び方を考えさせようとしないのと同じである。

切符の買い方は教えたから勝手に電車に乗っていけ、というのと変わらない。それでは若者が旅にでるはずもない。投票の形だけ教えて、政治を考えることを教えないのでは、政治に関心ももたないし、関心もないのに投票しに足を運ぶはずもない。

旅にでない若者、つまり投票に足を運ばない18歳と19歳に期待することを止めてしまったのか、今回の都議選では、この層への立候補者の働きかけは弱すぎるし、マスコミの注目も薄すぎるようだ。昨夏の騒ぎがウソのようである。

18歳や19歳が存在感を示し、そして政治を変えるには、18歳の投票率がドンと高くなり、それにより当選者の番狂わせが起きるような「18歳の反乱」が必要である。とはいえ、投票したい人も政党もない状況と、「投票は大事」と言いながら「選挙に関心をもつな」という教育現場では、そんなことを期待するほうが無理なのかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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