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ところで、どこに文科省としての具体策はあるのか

前屋毅フリージャーナリスト
松野博一文科相(写真:ロイター/アフロ)

松野博一文科相が4月11日、東日本大震災の原発事故で避難している子どもたちへのいじめ防止に関するメッセージを示したそうだ。

子どもたちに対しては、「いじめを防ぐためには、相手の立場になって思いやりをもち行動するのが必要」と諭し、「放射線についての科学的な理解も大事」などと述べたそうだ。そして教育委員会や教職員に向けては、「被災児童生徒がいじめを受けた事案が発生している。そのなかには、いじめ防止対策推進法に則った適切な対応を行わず、被害を受けた子どもが深く傷つく事案もあった」と指摘したうえで、「被災地の状況に係わる情報を正しく理解できるように取り組んでほしい」と語っている。

これは、文科省が原発事故で避難している子どもたちに対するいじめの状況確認に関するフォローアップを実施した結果を踏まえてのものである。それによれば、2016年度だけでも避難児童生徒へのいじめの認知数は129件あったという。

つまり、「これだけのいじめ件数があったから、もっと防止に努力しなさい」と松野文科相は苦言を呈したにすぎない。フォローアップにしても学校へのアンケートによる調査でしかないし、それについて具体策を示すことなく「努力しなさい」と学校現場に丸投げしただけのことである。

たとえば、放射線についての科学的理解や被災地の情報が必要というのなら、文科省みずからが率先して情報発信すべきだ。それも原発事故発生時のように安全基準がコロコロ変わるご都合主義の情報発信では困る。そうした姿勢が、現在の混乱につながる一つの要因にもなっている。

なんでもかんでも学校現場に丸投げし、それだけで自らの責任は果たしたとするような姿勢は、そろそろ改めたほうがいいのではないだろうか。文科省にも当事者意識が必要とされていることを理解してほしい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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