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教員志望者にとって新たな負担になることはまちがいない

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

文科省は、大学における小学校の教職課程で卒業までに「英検2級程度」の英語力を身につける目標を設定し、そのための学習内容である「コア(基本)カリキュラム」を2017年度から順次導入するよう各大学に促していくという。

2020年度から本格実施される時期学習指導要領では、小学5~6年で英語を正式教科とし、3~4年では成績のつく正式教科ではないが、外国語活動として英語に触れさせることが決まっている。そうなると小学校の大半の教員が英語を指導しなくてはならなくなるわけで、指導できる力を教員志望の学生に求めているわけだ。

英検2級というと、英検を実施している「公益財団法人 日本英語検定協会」のホームページによれば、「高校卒業程度」となっている。教員志望の学生は厳しい入学試験をパスして大学に進学してきているわけだから、「難なく取得できる資格」と受け取られるかもしれない。

しかし、現実は大きく違う。受験者数もそれほど多くないこともあるが、受験して合格できるのは25%くらいしかいない、というのが英検2級の現状といわれている。日本英語検定協会のホームページに示されている英検2級の「出題目安」には、「ビジネスシーンでも採用試験の履歴書などで英語力をアピールできます」ともある。堂々と「英語ができます」と言えるくらいの力が求められているわけだ。とても、「高校卒業程度」ではない。

だからこそ文科省も、大学に新たなカリキュラムの導入を促していることになる。特別なカリキュラムで対策をしなければ突破できない難関だといえる。英検2級程度と必ずしも英検資格を要求しているわけではないが、実際には資格取得が前提にされることは目に見えている。

教員志望の学生にしてみれば、新たに大きな負担になることはまちがいない。昨年度の公立学校教員採用選考試験の受験者総数も前年度に比較して2.6%減となっており、減少傾向が続いている。新たに英検2級取得という負担が増えれば、ますます教員希望者が減る可能性はある。

小学校で英語を正式教科にしたり、教員志望者に英検2級程度という基準を押しつけたり、乱暴さばかりが目立つのが文科省の英語教育方針である。「英語は必要ない」などと言うつもりはないが、もっと慎重な姿勢で臨まなければ、ただ学校現場を混乱させるばかりで、実のあがらないことにしかならないだろう。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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