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アクティブ・ラーニングが消えた!

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

2020年に本格実施となる新学習指導要領だが、その目玉のひとつと騒がれていたのが「アクティブ・ラーニング」である。すでに関係の書籍が洪水のごとくあふれ、学校現場でも導入に向けて、いろいろな取り組みが始まっている。

ところが、そのアクティブ・ラーニングが消えた。2月14日に文科省は、小・中学校の学習指導要領改定案を公表したのだが、昨年12月16日に公表された次期学習指導要領に向けた中央教育審議会初等中等教育分科会で示された答申では、はっきり記述されていたアクティブ・ラーニングが消えているのだ。

ただし、アクティブ・ラーニングそのものが消えたわけではなく、「文言」が使われなくなっただけなのだが・・・。

なぜ文言としてのアクティブ・ラーニングが消えたのか。文科省は、定義が曖昧な外来語で法令には適さない、と説明しているそうだ。アクティブ・ラーニングの曖昧さを、文科省自体が認めたにすぎない。

実際、アクティブ・ラーニングの解釈はさまざまで、教員が教室中を動きまわったり、ただ矢継ぎ早に生徒に質問を浴びせて答えさせるのがアクティブ・ラーニングだとする、ちょっと首を傾げたくなるような実践がまかりとおったりしている。文科省が指摘しているように「定義が曖昧」なために、アクティブ・ラーニングで現場は混乱してしまっているのだ。

それなら、文言としての使用を止めた文科省が、アクティブ・ラーニングの「真髄」を伝えられる表現にしたかといえば、そうでないところが残念なところである。公表された学習指導要領改定案では、「主体的・対話的で深い学び」と表記されているにすぎない。

これだけで、意図していることが正確に伝わり、実践させることができると文科省が考えているとすれば、「無茶」そのものである。

「アクティブ・ラーニング」を「主体的・対話的な深い学び」と言い換えてみたところで、文科省が何を意図し、何をやらせようとしているのか、相変わらず不確かなままだ。学校現場では、それぞれ勝手な解釈で実践されるならまだしも、依然として「どうしていいかわからない」という状態に変わりはなさそうだ。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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