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長時間労働解消なら、部活より授業に休養日を設けてはどうだろうか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:田村翔/アフロスポーツ)

新年早々の1月6日、文部科学省(文科省)は、中学校の部活動について休養日を適切に設定するようもとめる「通知」を、全国の教育委員会などにだした。指導にあたる教員の長時間労働を改善し、負担軽減をはかるのが目的だという。

教員が部活動に割いている時間は世界的にも飛び抜けて長く、それが長時間労働の原因になっていることはたしかである。それを是正することに異論はない。

しかし、部活動で休養日を設けたからといって、教員の長時間労働の問題が根本的に解消されるわけではない。

今回の通知は、全国の国公私立中学を対象にスポーツ庁が昨年行った調査結果を受けてだされたものだ。それによれば、22.4%が部活動の休養日を週1日も設けておらず、42.6%が土日に設けていなかった。それによって教員は長時間労働を強いられ、負担を強いられていると判断したわけだ。

休養日を設けることで、部活動における教員の長時間労働と負担は改善されるかもしれない。問題は、その実効性である。

文科省は1997年にも、部活動に休養日を求めることを中学や高校に求めている。しかし、それが実態として受け入れられていないために、今回の通知につながっているわけだ。

それを考えれば、今回の通知も受け入れられるとは考えにくい。そもそも「通知」は法的拘束力も罰則もないのだから、学校として無視すれば、それで終わりである。

そんな通知をだしても、教員の長時間労働の解消にはつながりにくいのだ。実効性がない。

それよりも、部活の指導にあたる教員については、部活動以外での時間を短縮したほうが効果的ではないだろうか。つまり、担当する授業で休養日を設けるのだ。もしくは、担当授業の時間を短くする。

部活動にも支障をきたさないどころか、より充実した指導ができるし、指導する教員の長時間労働の問題も解消し、負担も軽減できる。まさに一石二鳥の良策である。

とはいえ、それで他の教員の負担が増えるのでは元も子もない。部活担当教員の負担を減らすには、その休養日を補う人員の補充が前提となる。

それが難題であることも承知している。しかし、難題だからといって本質的な問題解決に取り組まず、実効性のない通知ひとつで自らの責任は終わったとするような文科省の姿勢には疑問をもたざるをえない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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