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民間の尻を叩くだけの安倍政権の杜撰な「子育て支援」

前屋毅フリージャーナリスト

「教育の再生」を政策の大きな柱のひとつとして掲げている安倍政権だが、どうにも「杜撰さ」が目立つ。

10月19日、政府は総理官邸で「子供の未来応援国民会議」の発起人会議を開いた。政府が新たに創設した「子供の未来応援基金」へ地方自治体や企業からの寄付を増やそうというのが「国民会議」発足の狙いで、全国知事会会長や経団連副会長らが出席した。

その席上、菅義偉官房長官は「新たな三本の矢の『子育て支援』のひとつが子どもの貧困対策だ。一億総活躍社会の実現には生まれ育った環境にかかわらず、未来の担い手である子どもたち一人ひとりが活躍できるよう、誰でも努力しだいで大きな夢を持てる社会にしなければならない」と述べた。もちろん、それを批判する気はない。

ただし、「それなら、もっと本気でやってよ」という気持ちはある。

集めた寄付を貧困家庭の子どもを支援するNPO法人への助成や子どもの学習支援拠点の整備などに使うことで、子どもの貧困を解決しようというのが「子供の未来応援基金」である。政府の支出ではなく、寄付に頼ろうというわけだ。

本気で子どもの貧困問題に取り組む気があるのなら、まずは政府自らが「身銭」を切るくらいの姿勢をみせるべきである。そうでなければ、地方自治体や企業が動くわけがない。

実際、「子供の未来応援基金」への寄付は10月1日から受け付けられているが、19日までに集まったのは約150万円にすぎない。こんな状態だからこそ、「国民会議」なるものを発足させて、地方自治体や企業の尻を叩いた、としかおもえない。そんな無理矢理な姿勢では、子どもの貧困をなくす社会を実現できるわけがない。

「国民会議」の発起人会議で菅官房長官は、奨学金制度やひとり親家庭の支援の充実などに取り組む考えも示したそうだが、その具体策をだし、実行することが先決だろう。自分たちのやるべきことは後回しにしておいて、地方自治体や企業の尻ばかり叩くようなやり方は、いただけない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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