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問題は学校の隠蔽体質だ

前屋毅フリージャーナリスト

東京都立高校の入試において採点ミスがあり本来なら合格である受験生が不合格になっていた問題で、「問題発覚後に5校が昨春の入試の答案を廃棄していたことがわかった」と『朝日新聞』(6月6日 電子版)が伝えている。

明らかな「証拠隠滅」である。都教育委員会(都教委)は、なんらかの処分を5校に対して行うことになるのだろうが、結局は「トカゲのしっぽ切り」でしかない。

これが1校だけなら、処分で処理してしまってもいいのかもしれない。問題は、1校だけでなく5校もあったということだ。調べれば、もっと出てくる可能性もある。これは、もはや「体質」の問題だ。

問題が起きると、それを大きくせずに内部だけで処理して済ませてしまおうという体質が学校にはある。公立では問題を起こした教員の責任を父兄にも明らかにせず、他校に異動させて、問題をウヤムヤにしてしまうやり方は、もはや状態化しているといっていい。

だから、問題を大きくしないために、再発防止のためには大事な証拠となる答案をさっさと廃棄してしまおうという高校があっても不思議ではない。隠蔽してしまおうとする体質なのだ。

ただし、隠蔽できるとおもっているところが幼稚すぎる。処分してしまえば自分たちは責められることはない、と考えているかのような行動は、責任感の欠如でしかない。やっていることは、幼稚そのものである。

それを、子どもたちを教える立場である学校や教員が行っているのだ。採点ミスも重大な問題だが、それ以上に、この学校の隠蔽体質をどうにかする必要がある。そうでなければ、ますます日本の教育は絶望的なものになっていく。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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