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静岡県民の質が問われている、全国学力テストでの公表騒ぎ

前屋毅フリージャーナリスト

ただの騒ぎで終わってしまうのだろうか。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果に怒った知事が成績下位校の校長名を公表すると発言した問題で、静岡県内が混乱している。

同県の安倍徹教育長は、「(川勝平太)知事には公表しないよう求める」と明言した。その一方で、「公表してもいいとは思っている」(『読売新聞』電子版 9月13日付とも安倍教育長は言っている。

その理由を彼は、「公表して先生の問題意識が高まり、成績が良かった学校の授業を見に行くなどプラスにとらえることができれば、教育的配慮で公表するという判断をしてもいい」(同)と語ったそうだ。つまり、知事と根本的に変わりはない。

罰を与えなければ「先生」の問題意識は高まらない、と考えているわけだ。「先生」たちも軽くみられているものだ。そして、教育とは全国学力テストの点数だと考えてもいるようだ。

その「先生」たちも黙ってはいない。県高校障害児学校教職飲組合など3団体が、「学校間の競争をあおり立て教育現場を混乱させる」として、公表を撤回するよう知事宛の申し入れを提出している。ただ、そこに教育予算や教員を増やせという要求も列記したそうだ。

それは問題の焦点をボケさせることにしかならず、「本気か?」と言わざるをえない。子どものための教育を第一にしているのか、それとも自分たちを守ることを第一にしているのか、首をかしげたくなる。

保護者の意見も割れているようだ。川勝知事の方針を支持する声もあれば、学校が勉強だけの場になってしまいかねないことを懸念する声も少なからずあるという。

そうした声をうやむやにせず、きちんと議論していくことが大事である。全国学力テストでの成績を上げることだけでなく、全国学力テストの意味、教育の本質にまで議論を高めるべきである。

それができなければ、ただ公表の是非という上辺だけの騒ぎで終わってしまう。問われているのは教育関係者や保護者の教育に対する考え方そのものである。まさに、質が問われているのだ。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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