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景気を引っ張るか、牛丼店の高価格メニュー

前屋毅フリージャーナリスト

■牛丼チェーン店らしからぬメニュー

景気は「消費者の気分」に左右されるところが少なからずある。収入が増えても「財布のヒモは締める」という消費者の気分が強ければ、景気は上向かない。その逆も、ありうる。

牛丼といえば、景気低迷の象徴にされてしまったところがある。給料が上がらないどころか減る傾向のなかで小遣いを削られたビジネスマンたちが、チェーン展開する牛丼店に行列をつくるという現象が目立ったからである。

もちろん、そこには懐の寂しいビジネスマンたちを狙った牛丼チェーン各社の戦略があり、それが、まんまと当たったことになる。ただ、それが牛丼チェーン同士の値下げ合戦を激化することにもなり、経営的には万々歳という状態ではなかったことも事実だ。

その牛丼チェーン各社が、相次いで高価格帯のメニューを投入しつつある。「吉野家」は、並盛りで480円の「牛カルビ丼」と「ねぎ塩ロース豚丼」を今月4日から全国で発売するという。そして「松屋」も、同じく4日から並盛り500円の「唐揚げ丼」を発売するそうだ。両チェーン店ともに常時あつかう丼物としては最高額というから、「従来の牛丼チェーン店らしからぬメニュー」である。

■時代の流れは高価格か、まだ低価格か

消費者が「ちょいと財布のヒモをゆるめてもよかろう」という気になって高価格メニューに飛びつけば、「高価格でも売れる」という気分がひろがるかもしれない。その気分が消費を引っ張り、景気拡大につながる可能性もある。

そうなると牛丼チェーン店は景気低迷の象徴から、景気回復の象徴になるかもしれない。牛丼チェーンのイメージアップにもつながる。

とはいえ、6月5日に吉野屋を展開する吉野屋ホールディングスが発表したところでは、今年5月の既存店売上が昨年に比べて15.9%増えたが、それは4月18日から牛丼並盛りを100円値下げして280円にした効果だとみられている。消費者が牛丼チェーン店に求めているものは、まだ「安さ」なのかもしれない。

そうしたなかでの高価格戦略だが、景気回復への「気分」につながることを期待せずにはいられない。ただしサブメニューというところが気になるところで、どうせなら主流の牛丼で高価格を打ち出したほうがインパクトはあるとおもうが、そこまでの「チャレンジ」を期待する段階でもないのかもしれない。ともかく、牛丼チェーン店の高価格戦略には注目していきたい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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