小売業に何が足りないのか

■ここから何を学ぶか

日本人は変わったのだろうか?日本で通販は定着するわけがない、といわれていた。ところが現在、通販は小売業の中心的存在になりつつある。

ネット通販で世界最大手のアマゾンが、初めて国別の売上高を明らかにしている。それによれば、日本国内における2012年の売上高は約7300億円にものぼったという。

百貨店業界首位の三越伊勢丹の売上高(2012年3月期)が単体で約6378億円だったことを考えれば、「中心的存在」という言い方もはずれていないことがわかるはずだ。日本で通販は定着してきている。

それでは、なぜ、日本で通販は定着するわけがない、といわれていたのだろうか。よく言われていたのは、「日本人は現物を見なければ信用しない」という理由だった。逆に言えば、インターネットや電話だけのやりとりで、まともな商品が届くわけがない、といった思いこみが強かったのだ。通販でインチキなものを販売する商法があったのも事実で、そのために通販=インチキという固定観念が日本人には強かったのかもしれない。

しかし現在は、通販で商品を買うのは不思議でも何でもなくなっている。それは通販で購入しても、インチキなものではない正当な商品が届く、という意識が広まったためだろう。すべてが安心というわけではないが、そうそう不安をもたずに購入に踏み切れるようになったのも事実である。それを実現してきた通販業者の努力は高く評価すべきだ。

そして、流通経路が省かれている分だけ店頭よりも安く購入できるケースが多い。これは、消費者にとっては大きな魅力であることはいうまでもない。

さらに、早い。アマゾンを利用した経験からいえば、朝に手続きしたものが夕方には届くことだってある。時間を使って、電車に乗っていく手間を考えれば、かなり便利だ。だから、利用者は増えている。

ともかく、通販が日本で定着している。そして、中心的存在になろうとしているのは事実なのだ。

■ほんとうの知恵が求められている

通販が定着してきている一方で、百貨店をはじめとする店頭販売は不振にあえいでいる。個人商店では閉店が珍しくなくなり、シャッターを閉めたままの店舗が増えてシャッター通りと化している商店街も少なくない。

景気低迷で消費そのものが落ち込んでいるのだから仕方ない、という意見があるかもしれない。確かに事実だが、それだけで説明しきれるものでもない。実際、前述のようにアマゾンのような通販は実績をあげている。

考えなくてはならない問題は、いくつもあるにちがいない。そのひとつを、店頭での販売が落ち込んで通販が活気づいている現状から指摘するとすれば、「欲しいものがあるか」という点ではないだろうか。

通販は、インターネットを武器にすることで膨大な品揃えをもつことができている。印刷物のカタログには限界があるが、インターネットは無限のカタログといっていい。そこから消費者は、欲しいものを探しだせるのだ。

しかし店頭販売となると、物理的な問題で置ける品物の種類、数量は限られている。だから、消費者の欲しがるものがなかったりする。欲しいものがなければ、消費者は買わない。

個人的経験でも、店舗を探しまわっても見つからないものが、インターネットで検索すると見つかる場合が少なくない。だから、通販を利用することになる。

店舗販売が廃れて通販がのびてくるのは時代の流れ、なのだろうか。店舗販売は廃れるままにしておけばいいのだろうか。そう簡単に割り切るわけにはいかない。

いまの店舗販売が、消費者の欲しがるものを置いていないところなら、「消費者の欲しがるものを置いているところ」に変えていくべきではないだろうか。もっと言えば、「消費者が欲しがるもの」を置けばいい。

どの店に行っても横並びの品揃えでは、消費者は興味を示さない。欲しいものさえ見つからないのでは、足を運ぶ気にもならないのは当然である。

横並びの品揃えではない、消費者が欲しがるものを置く店舗づくりから考えてみることも必要なのではないだろうか。もちろん、簡単なことではない。それどころか、かなり難しいことだとおもう。しかし、ひとつのヒントとして考えられないものだろうか。