大学入学共通テストの「世界史B」の試験時間中、何ものかが試験問題を撮影し、インターネット通話アプリ「スカイプ」を介して外部の大学生らに流出させた疑いがあるとして、警視庁が捜査を始めた。

問題流出による「カンニング」は何罪か?

 流出犯は「高校2年の女子生徒」だと称して家庭教師の紹介サイトに会員登録し、複数の大学生らにオンラインでの指導を要請したうえで、体験授業で彼らの実力を知りたいからと「世界史B」の問題の画像を送信して解答を求めた。

 大学生らは予備校が主催する模擬試験の問題だろうと考え、解答を返信したものの、その後、相手と音信不通になったばかりか、実際には共通テストの問題だったと分かって驚き、大学入試センターに情報提供したという。

 こうした試験問題の流出に伴う「カンニング」の場合、人を欺いたり人の錯誤や不知を利用し、試験の運営業務を不正に妨害したということで、刑法の偽計業務妨害罪に問われることになる。最高刑は懲役3年、罰金だと50万円以下だ。

 2011年に社会を騒がせた大学入試問題ネット投稿事件でも、犯人の受験生は偽計業務妨害罪で逮捕されている。京都大学などで行われた2次試験中、隠し持った携帯電話に試験問題の一部を入力し、ヤフーの掲示板「知恵袋」に投稿したうえで、一般ユーザーから解答を得るという手口だった。

今後の捜査の焦点は?

 その事件では、警察はヤフーや携帯電話会社などから接続記録や契約情報などを取得して捜査を進め、犯人の特定を行った。今回の事件でも、警察は同様に家庭教師紹介サイトやスカイプの運営会社、携帯電話会社から接続記録や契約情報などを入手し、流出犯に迫ることになる。

 また、犯人が実際に流出させた複数の画像には、試験問題を押さえる右手やその指、爪、洋服の袖のほか、右手に持ったピンク色のシャープペンシルなども同時に写り込んでいる。こうした細かな情報からも、警察は流出犯の特定を行うことになるだろう。

 そのうえで、高得点を狙った受験生個人による単独犯なのか、それとも受験生に扮して試験問題を撮影・送信する役や、複数の大学生に転送して解答を得る役、そこで得た正解を希望する受験生に試験時間中に有料配信する役など、何らかの組織的な背景に基づく大掛かりな事件なのか、捜査を進めることになる。

解答した大学生はどうなる?

 ただ、試験問題を流出させたのが未成年の受験生で単独犯だった場合には、たとえ立件に至っても、検察は少年法に基づいて家裁送致することになる。入試の公平性を揺るがす犯罪ではあるが、成人同様の刑事処罰が必要だとして家裁が検察に「逆送」することなく、そのまま終わってしまう可能性もある。

 現に、あれだけ騒がれた2011年のネット投稿事件も、19歳だった犯人の男性は家裁送致されたあと、深く反省しているとして「不処分」になっており、保護観察すらも付けられなかった。

 一方、問題を受け取って解答を返した大学生らだが、報じられているように本当に何も事情を知らず、流出犯との共謀がなかったということになれば、取調べを受けることにはなるものの、お咎めなしで終わるだろう。ネット投稿事件の解答者らも同様だった。

 捜査では、こうした関係者の接点に対する真相解明も求められる。警視庁が本格的な捜査を開始した以上、たとえ偽名でも流出犯の特定は時間の問題だ。逮捕されるなどこれまで以上の大ごとになる前に、一刻も早く自ら警察に出頭することが望まれる。(了)