映画「コンフィデンスマンJP」の最新作「英雄編」の公開を記念し、劇場版第1弾と第2弾が2週連続で地上波放送された。長澤まさみ演じるダー子ら詐欺師グループが大掛かりな信用詐欺を仕掛ける人気シリーズだ。

「ペディグリーペット詐欺」とは?

 詐欺事件の捜査を担当した経験がある者として驚かされたのは、第1弾「ロマンス編」で「ペディグリーペット詐欺」が実に分かりやすく描かれていたことだ。ダー子と織田梨沙演じるモナコの最初の接点であり、これが作品全体の重要なモチーフとなっていた。

 「ペディグリー」とは血統や由緒正しさを意味する。血統書を偽造した「ペット」の犬が詐欺の小道具としてよく使われたことから、「ペディグリーペット詐欺」と呼ばれるようになった。

 要するに、価値が乏しいものを価値が高いものであるかのようにみせかけ、高値で売りつけるという古典的な詐欺の手口だ。2人以上の詐欺師グループにより行われる。

 モナコもブリーダーに扮した仲間の男とグルだった。(1)モナコがダー子の隣で子犬を置いて席を立つ、(2)男がダー子の犬だと勘違いしたふりをし、ダー子に「珍しい犬だから100万円で買う」と言って名刺を渡して立ち去る、(3)戻ってきたモナコが「別れた彼氏との思い出の犬なので誰か10万円で買ってくれないか」と泣きつく、という流れだ。

 ダー子が100万円の話を隠してモナコから10万円で子犬を買い取れば、この詐欺は成功だ。男の住所や電話番号はデタラメだから、100万円で転売しようとしても、男と連絡をとることなど不可能だからだ。もちろん、その犬には10万円の価値などない。

 こうした「ペディグリーペット詐欺」は、詐欺師にとって騙しのテクニックの「基本中の基本」にほかならない。ダー子が初めて覚えたのもこの詐欺だったので、ダー子が騙されるはずもない。劇場版第1弾では、そこから話が大きく展開していく。

写真:アフロ

手を替え品を替えて

 筆者が実際に取り扱った詐欺事件では、この「ペディグリーペット詐欺」の構図を応用し、詐欺の小道具として犬ではなく貴金属や宝飾品、骨董品のほか、未公開株や社債、不動産などが使われていた。

 しかも、より巧妙であり、いきなり騙すのではなく、何段階かにわたって本当に儲けさせ、信頼を深め、もっと儲かると誘い、次第に金額を引き上げていき、最後にドカっと大金を騙し取る。

 最近では、被害者と全く顔を合わせることなく、パンフレットの送付と電話でのやり取りだけで劇場型の「ペディグリーペット詐欺」が行われている。

 例えば、未公開株の会社に関するパンフレットを送りつけ、そこに記載された会社を名乗る男が「限られた人にしか案内しておらず、残りわずかだ」と水を向け、次に投資会社を名乗る別の男が「限定枠があって購入できないので、代わりに買って譲ってほしい。代金はもちろん、手数料も支払う」と誘う。

 「そんなバカな…」と思っているタイミングで、警察官を名乗る男が最近そうした詐欺が横行していて捜査していると告げたうえで、電話をかけてきた会社名などを聞き出し、「その会社なら全く問題ない」と太鼓判を押す。このような手口で、ひとり暮らしの高齢者らが次々と騙されているという。

 「他の人を出し抜いて楽に儲けたい」という人間の欲に上手くつけ込むのが詐欺師の常套手段だ。貴金属や株式など、詐欺の小道具に関する知識が乏しかったり、中途半端だったりすればするほど、彼らの口車に乗せられやすい。

 世の中にはうまい儲け話など転がっていない。日ごろからこうした詐欺の手口について情報を集め、家族と共有し、絶対に騙されないように注意しておく必要がある。「コンフィデンスマンJP」シリーズは、そのための格好の教材と言えるだろう。(了)