フードデリバリーサービス「出前館」で新規の会員登録を繰り返し、そのたびに初回割引クーポンを得て出前に利用していた男が逮捕された。「他の人もやっているから大丈夫だろうと思った」と容疑を認めているという。

なぜ会員登録できた?

 男は、電話番号のSMS認証により本人確認が行われる会員登録システムのすきを突き、1枚300円の格安SIMカードを約100枚ほど手に入れ、偽名を使い、埼玉県の自宅や実家を配達先にして94件もの会員登録を行った。

 そのたびに2000円以上の注文で1700円分が割り引かれるといった初回割引クーポンを獲得し、80回にわたってカレーやラーメンなど総額約20万円の商品を注文したうえで、クーポンの利用により約13万円分の支払いを免れていた。

 「出前館」や「ウーバーイーツ」といったフードデリバリーサービスの初回割引クーポンには「新規利用ユーザーに限定される」という絶対的な利用条件がある。大幅な割引率は新規ユーザーをサービスに引き込むためのものだからだ。

 男の行為はこうした利用条件に違反しており、警視庁サイバー犯罪対策課に逮捕されるに至った。

何罪になるか?

 ただ、詐欺罪は「人」を欺かなければ成立しない。今回のようにアプリ上で偽名や新規登録であるかのような虚偽の情報を入力して会員になり、初回割引クーポンを獲得し、利用したケースには適用できない。

 そこで男が問われているのが、そうしたコンピュータ犯罪を処罰するために1987年に創設された「電子計算機使用詐欺罪」だ。最高刑は懲役10年と重く、罰金刑がないので、たとえ被害額が少ない場合でも、罰金を支払って終わりということにはならない。

 新規登録キャンペーン中に複数のIDで会員登録を繰り返し、大量の「Tポイント」を不正に取得したケースなど、すでに同種の事案に対する立件例も数多く蓄積されている。

 スマホを複数持っている人や、1台のスマホで2枚のSIMカードを使い分けている人もいるだろうが、フードデリバリーサービスの規約では複数アカウントの使い回し自体が禁止されている。携帯電話会社の乗り換えで電話番号を変更した場合には、会員登録情報の変更が必要だ。

 したがって、過去に一度でも注文したことがあれば、あたかも新規ユーザーであるかのように装って別の電話番号で再登録し、初回割引クーポンを獲得して利用すると、電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性があるので注意を要する。

利用条件の確認を

 本人の登録分とは別に、同居している家族の名義や電話番号で新たに会員登録し、初回割引クーポンを獲得して利用するような場合も、利用条件に抵触していないか、あらかじめ慎重に確認しておく必要がある。

 というのも、フードデリバリーサービスによっては、世帯単位での利用を想定し、初回割引クーポンについて「同一住所からの注文は1回限り」といった条件が付されているからだ。冒頭で挙げた「出前館」もその1つだ。

 今回の男は、フリマサイトでアカウントの停止措置を受けた転売屋から1回2000円でSMS認証の代行を請け負い、新規アカウントを不正取得させたとされる事件ですでに逮捕、起訴されている。「出前館」の事件は再逮捕にあたる。

 さすがに悪質さの度が過ぎているし、一罰百戒的な立件であることは確かだが、たとえ割引分以外の飲食代金をきちんと支払っていたとしても、刑事事件に発展することがあるということを知っておくとよいだろう。(了)