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きょうから「送りつけ商法」の規制強化 不審な商品はすぐに捨ててもOKに

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:Paylessimages/イメージマート)

 きょうから「送りつけ商法」の規制が強化される。改正特定商取引法の施行に基づく措置だ。注文していない不審な商品が一方的に送りつけられた場合、代金を支払わず、すぐに捨てても構わなくなった。

「14日間ルール」が撤廃に

 こうした「送りつけ商法」は、健康食品や魚介類など手を替え品を替えて繰り返されてきた悪徳商法の一つだ。コロナ禍で在宅率が高まり、増加傾向にある。昨年のマスク不足の折りには、品質の悪いマスクを送りつけ、高額な代金を請求する業者まで登場した。

 たとえ「なにか頼んだっけ?」と思いつつ、宅配便を受け取ったり、開封したとしても、売買契約は成立しない。むしろ、そうした商品は業者が責任をもって引き取らなければならない決まりだ。

 しかし、これまでは「14日間ルール」があった。送りつけられた側が14日間にわたって商品の購入を承諾せず、業者も引き取りをしなければ、業者は返還を請求できなくなるというものだ。

 これは送りつけられた側からすると大きな負担だ。使ったり捨てたりせず、そのままの状態で保管しなければならないからだ。

 そこで、法改正によりこのルールが撤廃され、受け取った側が直ちにその商品を処分できるようになった。

 捨ててもよいし、そのまま飲み食いしたり使ったりしても構わない。その場合でも、業者に連絡したり、代金を支払う必要は一切ない。送りつけた業者のほうが悪いという理屈だ。

 同封された請求書に「不要な場合は送料元払いでお返しください。返送がなければ購入したとみなします」と書かれていても、完全に無視して構わない。

受け取らないのがベスト

 ただし、その際は、送り状の送付者名や連絡先のほか、開封した荷物を何枚かスマホやデジカメで写真撮影しておくとよい。写真データの記録から、いつ、どのような状態で届いたものか証明できるからだ。

 その上で、最寄りの消費者生活センターや警察にも通報しておくべきだ。相談の記録が残るので、注文したものではないという証明になるし、広く注意喚起が行われ、次の被害も防止できる。

 同様の通報が集まれば、警察としても捜査を進めやすくなる。忘れたころに代金の支払いを請求し、これから取り立てに行くとか裁判を起こすぞと脅す業者もいるから、警察の後ろ盾があると心強いはずだ。

 また、7月5日までに届いた商品の場合、改正法の施行前だから、なお「14日間ルール」が適用される。直ちに処分するわけにはいかないので、警察などへの通報が重要となる。

 とはいえ、トラブルに巻き込まれないためには、不審な宅配便などは受け取らないのがベストだ。それでも、家族の誰かが注文したと思い込んで受け取る可能性もある。特に代金引換の場合、先に支払ってしまうと、悪徳業者から取り返すのは困難だ。

 心当たりのない配達があれば、いったん受け取りを「保留」にするとよい。不在扱いで持ち帰りになるから、家族が注文したものだと分かった段階で再配達を依頼し、改めて受け取ることができる。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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