下校途中の小学生女児に女児用の下着を見せつける不審者の男…何罪か?

不審者に遭遇したら、防犯ブザーを鳴らし、走って逃げ、大声で大人に助けを求めよう!(写真:milatas/イメージマート)

 北海道の路上で下校途中の小学生女児に女児用の下着を見せつけるという不審者の男が現れた。何罪が成立するか――。

どのような事案?

 報道によれば、次のような事案だ。

「路上で男がポケットからサクランボ柄の『女児用パンツ』を出して、メガネを拭く様子を小学校低学年の女児に見せつけた」

「小学校高学年の女児が、男にリボンなどの模様がプリントされた女児用パンツを見せつけられ、直後にも別の女児がメガネをかけた同じような風貌の男に、下着とみられるものをポケットから落とす様子を見せつけられた」

「同様の不審者は、恵庭市内や隣接する千歳市内で去年から複数回にわたって小学生の女児に目撃されていて、小学校の下校時間に近い午後3時半から4時ごろの発生」

「20歳~30歳くらい、黒の短髪で、黒色のジャンパー様のものを着ていた」

2021年1月30日・STV NEWS

 男が手にしていたのは10年前に発売されていたパンツ型クリーナー「ふきパン」ではないかとの指摘もある。ファイバークロス素材でメガネや液晶画面を拭くことはできるが、小さすぎて履けないというジョークグッズだ。

 しかし、現在では手に入らないし、いちご柄、縞模様、水玉、ヒョウ柄、ブルマ風の5種類しか販売されておらず、サクランボ柄やリボン模様の商品はなかった。男は本物の下着を下校途中の女児に見せつけ、その反応を楽しんでいたものと思われる。

迷惑防止条例は?

 ただ、男は女児の身体を触るなどしておらず、自らの下半身を露出してもいないから、刑法の強制わいせつ罪や公然わいせつ罪に問うことはできない。

 他人の進路に立ちふさがって立ち退こうとしなかったり、不安や迷惑を覚えさせるような仕方でつきまとったら軽犯罪法で処罰できるが、今回のケースではこれも使えない。

 都道府県の迷惑防止条例は、路上などで人を著しく羞恥させたり不安にさせるような「卑わいな言動」に及ぶことを罰則つきで禁じているが、これも無理だろう。

 社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語や動作のことだが、単に黙ったまま下着をさりげなく見せつけただけだと、これにはあたらないと評価されるのではないか。

 最高裁で「卑わいな言動」にあたるとされた判例のケースも、約5分間、40m余りにわたって女性をつけねらい、背後1~3mの距離でズボンごしにお尻を11回ほど撮影したといった執拗な事案だった。

声かけ禁止条例は?

 あいさつや防犯のためといった「正当な理由」がないにもかかわらず、親や教師らの目の届かない状態にある児童に声かけなどに及ぶこと自体を禁止している自治体もある。奈良県大阪府栃木県宮城県などだ。

 「声かけ禁止条例」などと呼ばれるもので、(1)甘言・虚言を用いて惑わし、欺くことや、(2)いいがかりをつけたり、すごんだり、身体や衣服などをつかんだり、進路に立ちふさがったり、つきまとうことが禁止されている。

 (1)には罰則がなく、大阪府のみ常習犯に対して最高で罰金30万円まで科せる。(2)はどの自治体にも罰則があり、最高刑はやはり罰金30万円だ。

 しかし、そもそも北海道にはこうした条例がない。大阪府などの場合でも、やはり下着を見せつけただけだと、条例が規制する行為にはあたらない。

 結局、報道されている事実を前提とする限り、今回の男には何の犯罪も成立しないだろう。男もこれを分かった上で、ギリギリのラインにとどめているのではないか。

ためらうことなく通報を

 もっとも、こうした男の行為が次第にエスカレートしていく可能性はあるし、すでに児童を狙った性犯罪などに及んでいるかもしれない。

 そこで、全国の警察では、防犯活動の一環として、不審な声かけなどを性的暴行や誘拐、殺害といった凶悪犯罪の「前兆」ととらえた上で、市民の通報を受け付け、広く情報発信し、注意喚起を図っている。

 併せて、児童や目撃者らから事情を聴取し、現場周辺の聞き込みなどを行い、不審者に関する情報をストックし、その特定を進め、警告や指導などの措置を講じている。

 道案内を求めるなど、声かけの行為者に悪意がないケースもみられるが、児童を人目につかない場所まで連れ去るため、道に迷ったふりをする手口もある。

 不審者に遭遇した児童から助けを求められたら、その安全を最優先し、ためらうことなく直ちに警察に通報すべきだ。児童が現に被害を受けてからでは遅いのだから。(了)

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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