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ノート(169) 刑務所における運転免許の更新や国民年金の手続、医療措置について

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~教育編(7)

受刑52/384日目(続)

免許はどうなる?

 総務部の庶務課長による講義では、まず、運転免許の手続について、次のような話があった。

・刑期が長いと、服役中に運転免許の更新期限が過ぎ、失効してしまう。しかし、免許は出所後の就職や円滑な社会生活に役立つ。そこで、刑務所では、更新こそできないものの、失効後の再取得手続が可能となっている。

・具体的には、年1回、公安委員会の担当者らが刑務所にやってくるので、適性検査と講習を受けることで、再取得ができる。

・これは、「法令の規定により身体の自由を拘束されていること」などの「やむを得ない理由」により更新期間内に更新ができなかった場合、再取得時に技能試験と学科試験が免除されるという法令の規定を活用した制度であり、公安委員会の協力を得て行われているもの。

・ただし、刑期が短く、釈放時期の近くに更新期限を迎えるような場合には、出所後、自ら運転免許センターなどで再取得の手続をすること。失効日から6ヶ月未満であれば、「うっかり失効」ということで、無条件で技能試験と学科試験が免除される。

・また、失効日から6ヶ月以上3年未満の場合、服役の事実は期限までに更新できなかった「やむを得ない理由」にあたるので、運転免許センターなどでこれを明らかにすれば、技能試験と学科試験が免除される。刑務所が服役期間などを証明する「在所証明書」という書類があるので、出所前に発行を願い出れば、出所時に交付する。

・したがって、刑務所で免許の再取得手続ができるのは、刑期がおおむね2~3年以上で、すぐには仮釈放などが見込まれない受刑者ということになる。長期刑の受刑者になると、服役中に何度かこの手続を行うことになる。

・もっとも、再取得に要する手数料は自己負担だし、刑務所で免許を再取得すると、その刑務所の所在地が免許証の表面に記載される住所となり、顔写真も刑務所で撮影された坊主頭の姿になるので、知っておくこと。

 庶務課長の話に出てきた「在所証明書」は、氏名や生年月日、本籍のほか、入所と出所の年月日、使用目的などが印字されている公的な書面だ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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