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ノート(158) 8時間労働で10時間睡眠 刑務所における日々の生活の流れ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~確定編(9)

受刑21/384日目

動作時限

 朝になり、舎房全体に小中学校で流れるようなチャイムが鳴り響いたあと、壁のスピーカーから爽やかなメロディーが流れてきた。この日は平日の火曜日であり、起床時間である午前6時40分だと分かった。

 刑務所で「動作時限」と呼ばれる一日のスケジュールは、つぎのようなものだった。

【平日】

  6:40 起床◎

  7:00 点検

  7:10 朝食

  7:40 出室・検身

  7:50 作業開始◎

 12:00 昼食◎

 12:40 作業開始◎

 16:30 還室準備◎

 16:40 検身・還室

 16:50 点検

 17:00 夕食

 17:30 内省

 17:40 余暇・仮就寝

 21:00 就寝

【免業日】

  7:20 起床◎

  7:40 点検

  7:50 朝食

  8:30 余暇

 11:30 昼食

 12:00 仮横臥◎

 13:00 余暇◎

 16:20 夕食

 16:50 点検

 17:00 内省

 17:10 余暇・仮就寝

 21:00 就寝

 ◎はチャイムが鳴る

 被疑者・被告人と有罪判決が確定した懲役受刑者との一番の違いは、平日に刑務作業が義務付けられているという点だ。

 これがない「免業日」とは、土日祝日、年末年始の6日間、夏季の3日間のほか、居室で作文などを行う月2日の教育的指導日がそれにあたる。

 大阪拘置所だと第2、第4水曜日だったが、静岡刑務所では第2、第4金曜日であり、土日を含めると3連休が月2回ある形となっていた。

 また、刑務所は10時間睡眠であるうえ、布団を敷いて横になってもよい「仮就寝」「仮横臥」の時間も含めると寝てばかりだ。居室で寝ていれば逃亡や反抗などなく、少人数で多数の受刑者を管理している刑務官も楽だからだ。

 社会での不規則な生活で心身ともにボロボロという受刑者も多く、社会復帰に向けてこれを癒やし、規則正しい生活態度を身につけさせるという狙いもある。

起床から点検まで

 刑務所ではこの動作時限が絶対であり、これに基づき、さらに日々の生活に関する細々としたルールが決められていた。

 まず、たとえ早く目が覚めていても、起床時間までは布団の中で静かに横になっていなければならず、本を読んだり、ほかの受刑者と話をしたり、早く布団をたたんだり、洗顔するなどして他人の睡眠を妨げることは許されない。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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