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ノート(154) 服役する刑務所への移送と全裸での新入調査、再び

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~確定編(5)

受刑19/384日目

移送の気配

 この日は日曜で刑務作業がなく、静かな一日だったが、翌5月15日の月曜には拘置所からどこかの刑務所に移送されるだろうと予想された。

 5月13日の金曜に拘置所の幹部職員に呼ばれ、舎房のフロアにある面接室に行き、拘置所預かりとなっている私物を1つ1つ確認し、必要なものと処分するものを分類していたからだ。

 現金も、万札から1円玉に至るまでキチッと数え、総額や内訳を記した書類にサインしていた。職員が持ってきた紺色トレーナー上下を着て、サイズが合うか否かのチェックも行った。

 本来なら週明けの月曜に戻ってくるはずの金曜の洗濯物も、その日のうちに洗濯を終え、手もとに返ってきていた。

 支援者らによる移送中の襲撃や身柄奪還などを防ぐため、移送日や移送先、移送の方法、ルートなどは事前に教えないというルールになっている。そのため、幹部職員は何も言わなかったが、こうしたさまざまな動きから、先ほどのトレーナーを着て移送される日が近いのだと分かった。

 それも、土日は閉庁日でどこの刑務所も事務手続を行わないので、週明けの月曜になるのだろうと思われた。

 どこの刑務所で服役することに決まったのか、さまざまなパターンを想定してみたものの、断言できる材料まではなく、期待と不安が半々だった。もし遠方なら、早朝から「引っ越し」になるはずだった。

 衣類や本、筆記具などの所持品を整理し、貸与されていたキャリーバッグにしまい込み、この日は早めに床についた。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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