ノート(154) 服役する刑務所への移送と全裸での新入調査、再び
~確定編(5)
受刑19/384日目
移送の気配
この日は日曜で刑務作業がなく、静かな一日だったが、翌5月15日の月曜には拘置所からどこかの刑務所に移送されるだろうと予想された。
5月13日の金曜に拘置所の幹部職員に呼ばれ、舎房のフロアにある面接室に行き、拘置所預かりとなっている私物を1つ1つ確認し、必要なものと処分するものを分類していたからだ。
現金も、万札から1円玉に至るまでキチッと数え、総額や内訳を記した書類にサインしていた。職員が持ってきた紺色トレーナー上下を着て、サイズが合うか否かのチェックも行った。
本来なら週明けの月曜に戻ってくるはずの金曜の洗濯物も、その日のうちに洗濯を終え、手もとに返ってきていた。
支援者らによる移送中の襲撃や身柄奪還などを防ぐため、移送日や移送先、移送の方法、ルートなどは事前に教えないというルールになっている。そのため、幹部職員は何も言わなかったが、こうしたさまざまな動きから、先ほどのトレーナーを着て移送される日が近いのだと分かった。
それも、土日は閉庁日でどこの刑務所も事務手続を行わないので、週明けの月曜になるのだろうと思われた。
どこの刑務所で服役することに決まったのか、さまざまなパターンを想定してみたものの、断言できる材料まではなく、期待と不安が半々だった。もし遠方なら、早朝から「引っ越し」になるはずだった。
衣類や本、筆記具などの所持品を整理し、貸与されていたキャリーバッグにしまい込み、この日は早めに床についた。
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