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ノート(150) 実刑判決の確定で「被告人」から「懲役受刑者」の立場へ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~確定編(1)

勾留218日目

控訴期限を迎える

 判決の翌日からカウントして14日以内に控訴しなければ、一審判決がそのまま確定する決まりだ。最終日が土日祝日や12月29日~1月3日だと次の平日が期限になる特例もあるが、最終日が平日であればたとえ大型連休が間に入っていても、期限が延びることはない。

 4月26日のこの日は火曜日であり、判決の翌日から14日目となっていたが、この日のうちに控訴の手続をとらない限り、懲役1年6か月という一審の実刑判決が確定する。

 高裁あての控訴申立書を地裁に提出するというもので、通常は弁護人を介して行われるが、被告人が自らその手続を実行することもできる。ただし、拘置所にいれば裁判所に持参できないし、郵送だとタイムラグが生じるので、刑事訴訟法には次のような規定が用意されている。

「刑事施設にいる被告人が上訴の提起期間内に上訴の申立書を刑事施設の長又はその代理者に差し出したときは、上訴の提起期間内に上訴をしたものとみなす」(366条1項)

 すなわち、たとえ裁判所に対する提出があとになったとしても、拘置所に勾留されている被告人が自ら控訴申立書を作成し、拘置所の担当職員に提出すれば、その時点で裁判所に提出された場合と同じく、控訴の法的効果が生じる。

身辺整理を中心に

 もっとも、この14日間は、もっぱら確定に向けた身辺整理が中心となった。求刑の7割5分である実刑に対し、検察側が控訴することなどあり得なかった。そこで、こちらも控訴せずに判決を確定させ、そのまま服役し、早期の社会復帰を目指す方針だった。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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