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ついに4月1日から「覚せい剤」が姿を消します 「覚醒剤」との違いとは?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

 薬物事件に関する記事を目にした際、「覚せい剤」と「覚醒剤」が混在しているのに違和感を抱いた人も多いだろう。4月1日から前者が姿を消し、後者に統一される。

 すなわち、両者は同じ薬物のことであり、漢字だと「覚醒剤」と記載すべきだが、もともと「醒」という字が常用漢字表になかったため、法令や公文書などに使えなかった。例えば、「覚せい剤取締法」などと記載されていたわけだ。

 2010年にこの「醒」が常用漢字に仲間入りしたため、以後、法令や公文書などでも使えるようになったが、「覚せい剤取締法」については、わざわざその表記を変えるような改正が行われないままで推移した。

 そのため、例えば「組織犯罪対策法」では、いわゆる「共謀罪」の前提となる犯罪の一つとして、「覚せい剤取締法…(覚醒剤の輸入等)…(覚醒剤の所持等)…(覚醒剤の使用等)…(管理外覚醒剤の施用等)」といった統一性のない記載がなされていた。

 マスコミも、法律名を示すときは「覚せい剤」、所持や使用した薬物を示すときは「覚醒剤」と、記事の中で書き分けをしていたわけだ。

 こうした不格好を正すため、医薬品や医療機器などに関する法律の改正が行われるのに併せ、2019年に「覚せい剤取締法」を「覚醒剤取締法」とする法改正が行われた。

 施行は2020年4月1日だ。これにより、ようやく「覚せい剤」という表記が姿を消し、4月1日以降の犯行については「覚醒剤」に統一されるというわけだ。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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