職場の大掃除は年末だけ…実はアウト 年1回だと経営者に懲役や罰金も

(写真:アフロ)

 年末の風物詩である大掃除。実は法律で会社の経営者や飲食店のオーナーといった事業者に実施が義務付けられており、やらなければ刑罰まで科される決まりとなっているのをご存知だろうか。

「半年に1回」ルール

 すなわち、労働安全衛生法は、労働者を雇用して何らかの事業を行う者に対し、職場における労働者の安全や健康の確保、快適な職場環境の形成促進のため、さまざまな措置を義務付けている。

 その詳細は厚生労働省の労働安全衛生規則事務所衛生基準規則に記されており、清掃の実施については次のとおりだ。

「日常行う清掃のほか、大掃除を、6月以内ごとに1回、定期に、統一的に行うこと」

 すなわち、半年に1回以上は必ず大掃除を行わなければならないとされているわけだ。年末に1回だけといった会社も多いだろうが、実はアウトだ。

 逆に、半年に1回以上でありさえすれば、必ずしも年末に実施する必要はない。また、自社の従業員の手による必要はなく、専門の清掃業者に委託しても構わない。

 何をもって「大掃除」をしたと言えるかだが、わざわざ「日常行う清掃のほか」と規定している以上、これを超えるレベルのもの、すなわち普段は手が届かない場所まで念入りに大がかりな清掃を行うことを意味すると考えるべきだろう。

 もしきちんと決められた回数の大掃除を実施していなければ、労働安全衛生法違反であり、会社の経営者やお店のオーナーといった事業者に対し、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることになっている。

男女別トイレの設置も

 このほか、この法律や規則では、事業者の講じるべき措置として、意外と思えるような細かなことまで厳格に定められている。

 例えば、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合を除き、男性用と女性用に区別したトイレを必ず設けなければならない。

 しかもその数は、同時に就業する労働者の数に応じ、男性用小便器だと60人あたり1個以上、大便器だと30人あたり1個以上、女性用大小便器だと20人あたり1個以上と、かなりキッチリと決められている。

 男性従業員が多く女性従業員が1人だけというオフィスだと、男女共用トイレが1つしかないようなところも多いだろうが、実はアウトだ。ある日本酒メーカーの酒蔵を見学した際、仕事がら男性の蔵人しかいないのに、男性用とは別に女性用のトイレを設置しているのを見て、法令遵守に向けた意識の高さに感心させられた。

 この点については、男女共用トイレが1つしかない狭い店舗中心のコンビニチェーンが問題視されている。セブン-イレブンの女性オーナーらが、大手コンビニ各社に対し、男女別トイレへの改修要請に乗り出したという。こうしたトイレ事情は、女性従業員が定着しにくい要因にもなっているとのことだ。

 しかし、そもそもそれ以前の問題として、労働安全衛生法違反にほかならない。従業員が利用するための男女別トイレの設置義務は、会社や店舗の規模、事業内容などを問わないからだ。

 先ほどの大掃除の場合と同じく、違反には6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されるれっきとした犯罪だ。

 もちろん、労働基準監督署に通報があったとしても、いきなりこうした罰則が適用されるわけではなく、まずは立ち入り調査や行政指導から始まることになるが、一向に改善されず、放置が続けば、刑事事件化も視野に入ってくる。

 コンプライアンスの重視が叫ばれている昨今、こうした細かな法的ルールを知り、遵守することも重要だ。安全や健康に気配りをした快適な職場環境づくりは、従業員の満足度や作業効率を上げることにもつながる。

 事業の運営に際しては、弁護士や社会保険労務士といった専門家に相談しつつ、法令に沿って進める必要がある。(了)

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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