3億6000万円盗み、150万円使って逮捕の男 有罪だと何年くらい刑務所へ?
勤務先の警備会社金庫室から3億6000万円を盗んだ容疑で指名手配中だった男(28)が逮捕された。3週間余りの逃走中に150万円使い、残りは手つかずだったという。有罪だと何年くらい刑務所に行くだろうか。
窃盗罪の刑期は懲役だと10年まで。複数回にわたって別々の窃盗事件を起こしたのであれば最高刑は1.5倍の懲役15年になるが、今回はこれに当たらない。3億6000万円を10で割れば年間3600万円。だったら一攫千金を狙い、盗みでもやるかと考える者も出てくるだろう。
では、社会的反響の大きい窃盗事件だからということで、問答無用で最高刑である懲役10年になるかというと、必ずしもそうではない。盗んだ金額や回収・弁償による実害のほか、動機や計画性、犯行態様、被害者の落ち度、前科の有無など、様々な事情によって決められる。
今回の男は「今の生活が苦痛で、今後の生活費として使うために盗んだ」などと供述している模様だが、その動機に酌むべき事情はない。一方、盗んだ現金を送るための私書箱を用意しておくなど計画性が高いが、盗みが成功したあとの行動を見る限り詰めの甘さも見られる。
ただ、億単位の窃盗事件はあまりなく、結局のところ過去の同種事案における具体的な量刑が参考にされるはずだ。
例えば、2016年に警察官を装い、JR博多駅前で貴金属取引会社の男性らから約7億5000万円分の金塊を盗み、それぞれ1億円の報酬を得ていた主犯格の兄弟ですらも懲役9年だった。2013年からの3年間、ATMの保守点検中に不正操作を繰り返し、総額1億9550万円を盗んで使い果たした警備員の男は懲役5年だ。
そうすると、これらの事案との金額的な対比や、3億6000万円のうちほぼ全額が回収できたことからすると、今回の男に対する量刑は懲役6~7年といったところになるのではないか。仮釈放まで考えると、早ければ30代半ばには社会復帰できるはずだ。
ちなみに、江戸時代の公事方御定書では、10両以上の現金を盗めばそれだけで死罪だった。庶民の家族が1年間は普通に暮らしていけるだけの金額だったようだ。(了)