年賀状が間違って届いたり、配達途中で汚損していたり、届くべきものが届かなかった場合、どうなるのか

2018年は戌年(写真:アフロ)

 年賀状の配達枚数は減少の一途だが、なお重要なコミュニケーションツールであることは確かだ。では、誤配や汚損、届くべきものが届かないといった場合、どうなるのか。法令や約款に基づき、その原則を示したい。

【誤配の場合】

 機械や手作業で何重にも仕分けをしているものの、郵便物の取扱いがピークとなる時期だけに、他人あての年賀状が間違って届けられたといった経験をした人も多いだろう。

 もちろん、誤配された年賀状を受け取った側には何の落ち度もない。

 こうした問題については、郵便システムについて定めた郵便法が次のように規定している。

郵便物の誤配達を受けた者は、その郵便物にその旨を表示して郵便差出箱に差し入れ、又はその旨を会社に通知しなければならない」(42条1項)

 すなわち、たとえ面倒でも、その年賀状を最寄りの郵便局に持って行き、誤配であることを告げて局員に渡すとか、お客様サービス相談センターに連絡するとか、「誤って配達されたものである」などと付せんやメモ用紙に記載し、はがれ落ちないように貼り付けた上で、郵便ポストに投函する必要がある。

 何も記載せずにそのままポストに入れる人もいるだろうが、再び誤って配達される可能性があるので、郵便法はそうした義務を求めているわけだ。

 誤配後、自分あてのものではないということで、すぐに破り捨てるようなことをすれば、刑法の器物損壊罪が成立する(最高刑は懲役3年)。

 たとえ破り捨てなくても、面倒くさいからとか、お年玉付きの年賀葉書や年賀切手なので当せんするかもしれないといった理由により、誤配のままずっと手もとに置いていれば、刑法の占有離脱物横領罪(最高刑は懲役1年)に問われる。

 なお、年賀状のような葉書ではなく、封書が誤配され、気づかずに開封してしまった場合、郵便法は次のように規定している。

誤ってその郵便物を開いた者は、これを修補し、かつ、その旨並びに氏名及び住所又は居所を郵便物に表示しなければならない」(42条2項)

 すなわち、開封した部分を閉じ、テープなどで元の状態に戻し、自らの氏名や住所などとともに「誤って開封したものである」と付せんなどに記載し、貼り付けた上で、最寄りの郵便局に持って行ったり、郵便ポストに投函する必要がある。

 あくまで不注意による開封に限られ、他人あての手紙だと分かった上で、興味本位などから勝手に開封すると、刑法の信書開封罪(最高刑は懲役1年)に問われる。

【景品受取の問題】

 では、もし誤配されたお年玉付きの年賀葉書や年賀切手が当せんしており、郵便局で当せん品を受け取ったら、どうなるのか。

 2018年の場合、1等が宿泊やグルメ、家電、商品券といった12万円相当のセレクトギフトか、現金10万円、2等がふるさと小包など、3等が82円と62円が1枚ずつセットになった切手シートだ。

 「お年玉付郵便葉書等に関する法律」というものがあり、当せん金品の単価は葉書や切手の額面の5千倍まで、総価額も葉書等の発行総額の5%までといった縛りがあるからだ。

 運転免許証や健康保険証など、本人確認ができる身分証明書の提示を求められることにはなっているが、3等くらいであれば、特にそこまで厳密な手続も行われていないのが実情だろう。

 しかし、先ほどの法律によれば、当せん金品の支払いや交付を受けられるのは次の者だけだ。

・ 受取人

・ 配達されなかったときは、お年玉付き郵便葉書等の購入者

・ それらの一般承継人(相続人などのこと)

 総務省の指針によると、「受取人」とは差出人がその意思表示などを受け取る者として特に定めた者、すなわち名あて人に限られる。

 したがって、誤配されたお年玉付きの年賀葉書や年賀切手を郵便局に持参し、名あて人になりすまして当せん金品を得たら、刑法の詐欺罪(最高刑は懲役10年)に問われる。

 ねつ造した身分証明書を使っていれば、公文書偽造罪や行使罪(最高刑は懲役10年)も成立する。

 もちろん、当せんした家族の分を代理で受け取ることは可能だが、当せん者とその代理人の身分証明書が必要だし、両者の住所が異なる場合には委任状まで求められる、というのが建前となっている。

 差出人が受取人の自宅住所を知らず、個人的な年賀状が勤務先の住所あてに送られてくる場合もあるだろうが、当せん金品を交換する際には、名刺などの提示で対応してもらえる。

 ただし、勤務先の住所あてであっても、取引先からのもので、自分の部署名や役職名まで記載され、およそプライベートな年賀状とはいえない内容のものであれば、受取人は個人ではなく勤務先と見ることもできるので、念のため、勤務先に確認をとっておいた方がよいだろう。

 なお、書き損じや未使用の葉書でも当せん金品を受け取ることができるが、この場合は身分証明書などは不要だ。

 当せん金品を受け取る権利は、引き換え可能となる期日から6か月という早い期間で時効により消滅するので、注意を要する(2018年は最終日が休日である関係で1月15日から7月17日まで)。

【汚損の場合】

 こうした誤配のほか、配達の途中で雪や雨に濡れたり、汚れるなどし、配達された年賀状の文字がにじんで読めないといった経験をした人も多いだろう。

 一部が破れているといったこともあり得る。

 「この郵便物は、取り扱い中に誤ってき損しました。誠に申し訳ありません。補修の上お送りいたしますので何とぞよろしくご了承願います」と書かれた付せんを見たことはないだろうか。

 では、そうした場合、日本郵便側に損害の賠償を求めることができるだろうか。

 郵便法は、日本郵便が負担する損害賠償の範囲について、次のように規定している。

「次の各号のいずれかに該当する場合には、その損害を賠償する。

1 書留とした郵便物の全部又は一部を亡失し、又はき損したとき

2 引換金を取り立てないで代金引換とした郵便物を交付したとき」(50条1項)

「郵便の業務に従事する者の故意又は重大な過失により、第1項各号に規定する郵便物その他…記録郵便物…に係る郵便の役務をその本旨に従って提供せず、又は提供することができなかったときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(50条3項本文)

第1項及び第3項本文に規定する場合を除くほか、郵便の役務をその本旨に従って提供せず、又は提供することができなかったことにより生じた損害を賠償する責任を負わない」(50条5項)

 すなわち、書留や代金引換のほか、引受けや配達などを記録する郵便でなければならず、通常の封書や葉書は損害賠償の対象外とされている。

 年賀状も同様だから、たとえ集荷や仕分け、配達の途中で破れてしまったり、濡れたり汚れたりしていても、差出人も受取人も日本郵便に損害賠償を求めることはできない。

 クレームをつけたら業務の改善につながり、謝罪の言葉くらいはあるかもしれないが、それでも金銭的な賠償は行わない決まりだ。

 だからこそ、一般の郵便物は、離島や山間部などを含め、全国どこに送るものであったとしても、非常に安い同一料金に設定されているわけだ。

 意思伝達などの手段として、誰でも広く公平に使えるようにするためだ。

 もし通常の封書や葉書ですら損害賠償の責任を負わせてしまうと、日本郵便としても大幅に料金を引き上げざるを得なくなるし、局員らも仕分けや配達に際して臆病となり、現在のような速やかな配達も不可能となってしまうだろう。

【未配達の場合】

 では、届くべきものが届かなかったら、どうなるのか。

 休み明けに友人らから「送った年賀状は見てくれた?」などと聞かれ、思い当たらないので問い質すと、「絶対に郵便ポストに投函した」と言い張られた経験をした人もいるだろう。

 差出人が嘘をついていないということを前提とすると、先ほど述べた誤配のほか、日本郵便側が集配や仕分け、配達の途中で紛失するなどしたか、受取人の郵便受けまで配達されたものの、何者かによって盗まれた、といった可能性が考えられる。

 こうした場合、差出人も受取人も、日本郵便に調査を求めることができる。

 最寄りの郵便局に相談したり、インターネットのホームページから依頼すると、差出人から受取人に至るまでの郵便物の流れに従い、関係する郵便局を調査した上で、その結果を教えてくれるというシステムだ。

 おそらく「調査したものの、分かりませんでした」といった回答となるであろうから、さほど期待できないだろう。

 もっとも、こうした調査により、アルバイトの配達員らが大量の年賀状などを配りきれず、困り果て、配達せずに自宅に隠したり、廃棄したといった事件が発覚することもある。

 むしろ、年中行事ともいえよう。

 日本郵便の社員であるか否かにかかわりなく、故意に他人の葉書や封書を隠せば、刑法の信書隠匿罪(最高刑は懲役6月)が成立し、破り捨てれば、先ほども述べたように器物損壊罪(最高刑は懲役3年)が成立する。

 それがもし配達途中であるなど、日本郵便が取扱中のものだったのであれば、郵便法の郵便物隠匿罪や郵便物き損罪(最高刑は懲役3年)に問われる。

 では、差出人や受取人は、配達人らの故意による犯罪で損害を受けたと主張し、日本郵便にその賠償を求めることができるだろうか。

 配達されなかったお年玉付き年賀葉書などの中には、当せんしているものがあったかもしれない。

 廃棄されておらず、配達員らから回収された後、改めて配達されたとしても、引き換え可能期間を過ぎていたら、当せん金品と交換することもできない。

 しかし、この点についても、先ほどの誤配に関して述べたところと同じく、書留や代金引換、記録郵便ではない以上、たとえ配達員らの仕業であったとしても、日本郵便には損害賠償を求めることができないという仕組みとなっている。

 配達員ら個人に不法行為に基づく損害の賠償を請求するほかないが、郵便法の趣旨に照らし、この請求が可能か否かも法律家の間で見解が分かれているほどだ。

【配達日指定の場合】

 これとは逆に、配達日指定郵便を利用したところ、きちんと配達だけはされたものの、指定日よりも先や後に届いたといったような場合には、どうなるのか。

 家族や恋人、友人らの誕生日にお祝いのカードを送りたいとか、受取人が在宅している日曜日に配達してもらいたいといった希望があれば、指定日の配達を依頼できる。

 追加料金は、平日指定だと31円、日曜休日指定だと210円だ。

 しかし、この場合も、やはり原則論に立ち返り、書留のオプションをつけるなどしていなければ、たとえ指定日よりも先や後に届いたとしても、日本郵便に損害賠償を求めることはできない。

 最近でも、V6の岡田准一さんが宮崎あおいさんと結婚するに際し、ファンクラブの会員向けにクリスマスイブを配達指定日とした結婚報告を送ろうとしたものの、一部で“フライング配達”され、ネット上で拡散されてしまい、マスコミなどにも広く知られるハプニングがあった。

 これも、書留などではない以上、何らかの損害が生じたとしても、日本郵便には賠償責任はない。

【料金改定に注意】

 最後に、これから年賀状を出そうと考えている人に対し、重要な注意点を。

 何かと年末が忙しかったため、年明けからゆっくりと年賀状を書こうと考えていた人や、送ってくれた相手だけに年賀状を出そうといった人も多いだろう。

 2017年6月に通常葉書の料金が52円から62円に引き上げられたが、特例措置として、2018年1月7日までに差し出された年賀葉書に限り、52円という特別料金が適用される。

 条件として、表面の見やすい場所に「年賀」の文字を赤字でハッキリと記載しておく必要がある。

 お年玉付き年賀葉書であれば問題ないが、市販されているインクジェットの葉書用紙などを使う場合には、注意を要する。

 また、52円で発送できるのは、2018年1月7日まで、より具体的には1月8日の最初の集荷時間までに郵便ポストなどに投函されたものに限られる

 これを過ぎた場合には、10円分の切手を貼って差し出さなければならない

 では、こうした「料金不足」の場合、どうなるのか。

 日本郵便では、基本的に郵便物を先方まで届け、受取人の側から不足分を徴収することとなっている。

 もし支払いたくなければ、受け取りを拒否することができ、そこで初めて差出人に返送される。

 郵便物に差出人の住所や氏名が記載されており、差し出された郵便局の配達管内であれば、差出人に返送されることもある。

 しかし、1月8日から15日までの間に差し出された料金不足の年賀状に限っては、名あて人に負担をかけないようにするため、最初から差出人に返送されることとなっている。

 年賀状を52円で送ることができるのはあとわずかだから、早めの作成や投函が求められる。(了)

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信。唎酒師、日本酒品質鑑定士でもある。

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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