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阿佐ヶ谷姉妹の人気エッセイがドラマ化! 彼女たちがいま愛される理由とは?

ラリー遠田作家・お笑い評論家

お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹の著書『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(幻冬舎)が、NHKでドラマ化されることになった。木村多江が姉の渡辺江里子を、安藤玉恵が妹の木村美穂を演じる。総合テレビで11月1日から放送される。

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』は、発売当初から話題になっていた。阿佐ヶ谷姉妹は、ピンクのドレスに身を包んだ疑似姉妹コンビだ。血のつながりはないものの、顔や雰囲気が似ていることもあって「姉妹」を名乗って活動をしている。この本では、そんな独身中年女性の2人が、六畳一間のアパートで共同生活を送る等身大の日常がつづられている。

当時からすでにテレビにも出始めていた売れっ子の2人だが、エッセイで描かれる私生活はつつましい。六畳間にこたつを挟んで布団を2つ並べて寝ている。

あるときには、美穂が自分の布団だけをシングルからセミダブルに買い替えたために、江里子は自分の布団を敷くスペースが狭くなったことに不満を感じた。そんな同居生活におけるちょっとした小競り合いなどが、淡々とした筆致でユーモラスに描かれていた。

阿佐ヶ谷姉妹の2人は、仲が良さそうだが決してベタベタしていない。お互いがビジネスパートナーとしても友人としてもお互いを必要としていて、親しみも感じているのだが、近づきすぎてうんざりしたりするところまでは行かない。距離感が実に絶妙である。

美穂は、仕事場でも家でも江里子とずっと一緒にいる状況に疲れを感じることを「江里子過多」と表現する。そういうときにはお互いがそれとなく距離を置いて、1人で過ごす時間を作る。そして再び日常に戻っていく。

六畳一間が手狭になってきたと感じた2人は引っ越しを決意した。しかし、なかなか手頃な物件が見つからず、結局、いま住んでいる部屋の隣にもう1つ部屋を借りて別々に暮らすことになった。

阿佐ヶ谷姉妹の魅力は、芸人なのにガツガツせず、言動にそこはかとない品の良さが感じられるところだ。でも、決してお高くとまっているわけではなく、阿佐ヶ谷のアパートで庶民的な生活をしているというところに親近感を感じさせる。自分たちが「おばさん」であることに卑屈にならず、むしろそれを肯定的に捉えて、明るく生きている姿が好感を持たれている。

お笑い界でもすでに唯一無二の存在感を確立している阿佐ヶ谷姉妹の2人。今回のドラマは、彼女たちの魅力がさらに広く世に知られるためのいいきっかけになるだろう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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