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アルコ&ピースの酒井健太はなぜラップを始めたのか?【インタビュー】

ラリー遠田作家・お笑い評論家
晋平太(左)、酒井健太(右)

アルコ&ピース酒井健太と言えば、『キングオブコント』『THE MANZAI』で決勝進出したこともある実力派芸人だ。そんな彼が最近、フリースタイル・ラップを始めたことがファンの間でちょっとした話題になっている。「菊田健太」というMCネームで『戦極MCBATTLE』という大会の予選に出場して、2回戦敗退という結果に終わったのだ。

3月5日、東京の下北沢・本屋B&Bにて、そんな菊田健太こと酒井とヒップホップ・アーティストの晋平太のトークイベントが行われた。これは、晋平太の著書『フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩』(イースト・プレス)刊行を記念して行われたもの。晋平太は『B BOY PARK』『UMB』『戦極MCBATTLE』の3つの大会を制覇した最強のフリースタイルラッパー。そんな彼がこの本では、自分でもラップをやってみたいと思っている人のために、ラップの練習方法やMCバトルで勝つための極意を語っている。同書は酒井はもちろん、乃木坂46の中田花奈などラップに興味のある有名人にも愛読されている。

トークイベントでは、酒井が出場した大会の映像も特別に公開された。また、観客から参加者を募って、その場でラップバトルが繰り広げられる一幕もあった。晋平太は酒井に対して「(初心者のうちは)韻を踏むよりも気持ちが大事」などと貴重なアドバイスを送っていた。

それにしても、お笑い一筋だった酒井はなぜ突然フリースタイル・ラップを始めたのか? 彼はどこに向かっているのか? イベント前に本人を直撃してみた。

イベントの模様(下北沢・本屋B&Bにて)
イベントの模様(下北沢・本屋B&Bにて)

――酒井さんがラップを始めたきっかけは?

酒井:まあ、もともと聴くのは好きだったし、後輩とかと飲みながらフリースタイルみたいなのをやったりはしていたんです。ただ、大会とか出るようなレベルではなかったんです。1カ月ぐらい前にラジオ番組で軽い気持ちで「大会とか出てみようかな」って言ったら、それがリスナーにも(相方の)平子(祐希)さんにも引っかかったみたいで。スタッフさんにも「出ろ」って言われて、出なきゃいけないような状況になっちゃったんですよね。最初はマジで悩みました。

――大会に出ると決めてから練習はしたんですか?

酒井:まあ、歩いていて看板とか見ながら韻を踏むとか、そのぐらいですけど。でも、やっぱりフリースタイルなので、ネタ仕込んでもしょうがないところはあるんですよね。結局、バイブスだから。まあ、バイブスが伝わればヘッズも盛り上がると思うんで。

――実際に出てみた感想は?

酒井:みんなレベルたけえ! 超レベル高かったですよ。予選だからナメてたんですけど、めちゃくちゃレベル高くて。14歳とか15歳でも上手い子とかいて。勝てねえな、と思いましたね。

――これからもラップはやりたいですか?

酒井:本当に出る直前まで「マジでこれっきりにしよう」って思ってたんですけど、勝ったときのあの高揚感はお笑いじゃ体験できないですね。超気持ちいいです。それでもう1回やってもいいな、と思いました。まあ、大会があればいつでも僕は出ますよ、っていうスタンスで。「上等」って感じです。あとは「菊田健太」がどう言うかですよね。酒井は分からないけど、菊田がどう言うか。

――ラップをやることに関して周りの人の反応はいかがですか?

酒井:僕が一番気にしていたのは(事務所の先輩である)有吉(弘行)さんなんですよ。真面目にここまでズブッとやってたらどう思うんだろう、って。でも、大会終わって飲みに行ったら、「何だよそれ、おもしれえな」って。「もっとやればいいじゃん、上手くなったら面白いと思うよ」って言ってくれたので。ああ、じゃあこれからもやっていこうかな、って。

――相方の平子さんはどう思っているんでしょうか?

酒井:平子さんはたぶん、あんまり良く思ってないんじゃないですか(笑)。今はまだいいですけど、僕がもうちょっと出てきたら嫉妬すると思うんで。僕がイニシアチブを握ることになっちゃいますからね。

――コンビとしてはちょっとまずいかもしれない、と。

酒井:ただ、僕、いま止まんないですからね。誰も止めることはできないですから。

――少し前までは、芸人でラップを本格的にやる人は少なかったように思うんですが、最近はやる人も増えていて、イメージもだんだん変わっている気がしますね。

酒井:そうですね、とろサーモンの久保田(和靖)さんとかもやってますけど、すごい上手だなって思いますし。ただ、ラップって意外とお笑いに落とし込むのは難しいなって僕は思っていて。上手すぎても笑えないし、下手すぎてもグダグダになるし。もっと浸透していれば分かりやすいんでしょうけどね。今はパイセン(先輩)たちと一緒にその裾野を広げる作業をしてますね。

――お笑い界とラップ界をつなげていく存在になりたい、と。

酒井:ああ、それいいですね。そういうイベントとかも今後やっていけたらいいですね。

晋平太(左)、酒井健太(右)
晋平太(左)、酒井健太(右)
作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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