Yahoo!ニュース

2013年のお笑い界を振り返る

ラリー遠田作家・お笑い評論家

2013年は、お笑い界にとってなかなか厳しい1年でした。それを象徴しているのが、年末に発表された「ユーキャン新語・流行語大賞」の結果です。大賞には「今でしょ!」「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」の4つが選ばれましたが、お笑い関連の言葉はゼロ。2012年にはスギちゃん「ワイルドだろぉ」が大賞に選ばれていたのですが、それに匹敵するようなインパクトのあるフレーズをお笑い界から送り出すことはできませんでした。

そんな中で孤軍奮闘していたのが、オアシズ大久保佳代子。彼女はオリコンの「2013年ブレイク芸人ランキング」でも1位に選ばれるなど、2013年を代表する売れっ子となりました。

大久保の魅力は、あけすけに下ネタを言い放つ大胆さと、それを言っても嫌みにならない品の良さ。アラフォー女性が人前でなかなか口にできない本音を堂々と代弁する芸風で、主に同性からの圧倒的な支持を得ることに成功しました。

一方、2013年の前半に活躍した女性芸人として、キンタロー。を外すわけにはいきません。キンタロー。は、AKB48の前田敦子のものまねネタで一気にブレイク。ダンスのキレの良さと顔の大きさのギャップが笑いを誘います。

今の時代に勢いがあるのは、お笑い芸人よりもアイドルのほうです。キンタロー。はそんな時代背景を踏まえて、アイドルのものまねに特化することで人気を得ることに成功しました。

大久保やキンタロー。のブレイクからもうかがえる通り、ここ数年の女性芸人の活躍ぶりは目覚ましいものがあります。それは2013年も例外ではありませんでした。大久保を筆頭に、女性芸人たちがテレビバラエティの世界を席巻しています。

ハリセンボン近藤春菜「ニホンモニター 2013タレント番組出演本数ランキング」で堂々の2位にランクイン。11月10日放送の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)では、イモトアヤコがヒマラヤ山脈のマナスル登頂に成功して話題になりました。

キンタロー。に続いて2013年後半に脚光を浴びたのは、女性ものまね芸人のやしろ優。大胆なデフォルメを施した芦田愛菜や倖田來未のものまねネタで人気を博しました。

また、今年の夏に大型特番で八面六臂の活躍を見せたのが女性トリオの森三中。フジテレビの『FNS27時間テレビ 女子力全開2013 乙女の笑顔が明日をつくる!!』では他の女性芸人と共にメインパーソナリティーの大役を務め、日本テレビの『24時間テレビ36 愛は地球を救う』では大島美幸がチャリティーマラソンを完走。森三中の3人は、体を張って笑いをもぎ取る根性と「ゆるキャラ」のような愛らしさを兼ね備えています。彼女たちはいまや女性芸人ブームを牽引する存在です。

一方、男性芸人部門ではあまり大きな動きはありませんでした。昨年に続き、有吉弘行、後藤輝基(フットボールアワー)、バナナマンといった顔ぶれの勢いはいまだ衰えていません。

そんな中で2013年に大躍進を果たしたのが、九州芸人の博多華丸・大吉です。彼らはオリコンの「2013年ブレイク芸人ランキング」でも6位にランクインしました。博多弁丸出しで憎めないキャラの華丸と、いつもクールで冷静な大吉。対照的な個性が光る2人の九州芸人は、ようやく全国区でその名をとどろかせる存在になりつつあります。

一方、番組単位で見ると、大ヒットと呼べるようなお笑い番組は存在しなかったのが実情。『あまちゃん』『半沢直樹』に匹敵する大ヒット番組は生まれませんでした。そんな中で唯一話題になったのが、『笑っていいとも!』(フジテレビ)が2014年3月に終了するというニュース。1982年に始まった長寿番組の突然の終了の知らせは、日本全土に衝撃を与えました。これがきっかけになって、世間ではタモリや『いいとも』に対する再評価の機運が高まり、マスコミではその話題が頻繁に取り上げられました。

これから終了する番組が話題になるということ自体、お笑い・バラエティ番組が勢いを失っていることの証かもしれません。2014年には、この閉塞感を打ち破ってくれる新しい番組や芸人が現れることを期待しています。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

ラリー遠田の最近の記事