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「穴に落ちた瞬間、僕は変わった」俳優パク・ボゴムが語る大ブレークの原点

桑畑優香ライター・翻訳家
ドラマ「ボーイフレンド」の一場面より

2019年、韓国の専門家100人が選んだ次世代の韓流スター1位に選ばれた、パク・ボゴム、26歳。

司会や歌もこなし、昨年は韓国と日本をはじめ、香港、台湾などアジア9か国でファンミーティングを行った、韓流スターの中でもトップ・オブ・ザ・トップの存在だ。

「国民のボーイフレンド」「国民の世子」とも称される彼は、なぜドラマを観る人、会う人の心をわしづかみにするのか――。大ブレークのきっかけとなった原点、ドラマ「雲が描いた月明り」を軸に素顔に迫った。

ベストセラーWEB小説が原作の「雲が描いた月明り」
ベストセラーWEB小説が原作の「雲が描いた月明り」

――パク・ボゴムさんと一緒に仕事をした人からお話を聞く機会があったのですが、「完璧で魅力的な人」と伺いました。

パク・ボゴム:いえいえ(と、照れた笑顔)。

――ここ数年でパク・ボゴムさんを取り巻く環境は変わったと思いますが、ご自身も変化しましたか。

パク・ボゴム:賞をいただいたりするのは、良い作品と人との出会いに恵まれたおかげです。だからこそ、初心を忘れないようにしています。変わったことがあるとすれば、ファン層が広くなったことでしょうか。もっと外国語も勉強したいですね。でも、所属事務所の人や家族は変わることなく、褒めるというよりも客観的に意見をしてくれるんです。それがすごくありがたいですね。

2011年に映画「ブラインド」でデビュー。「恋のスケッチ~応答せよ1988~」(2015)の天才囲碁棋士役で注目されるも、プロデューサーによると「雲が描いた月明り」で主役に抜擢するのは、賭けだったという。ところが、ふたを開けてみると、伸び伸びかつ堂々たる演技。視聴率23.5%をたたき出し、一気に若手俳優トップの座に上りつめた。

パク・ボゴム:「雲が描いた月明り」のイ・ヨン役に抜擢していただいた時は、すごくうれしかったです。脚本がとても面白く、この役をうまく演じてみたい、表現してみたいという気持ちが強く、挑戦しました。でも、だんだん難しく感じ、演技に確信が持てなくなり、自信がなくなってしまいました。でも、ある時手ごたえを感じ、イ・ヨンというキャラクターを理解できるようになったんです。

――演出家のキム・ソンユンさんによると、最初役作りに苦労していたけれど、途中からすごく良くなったので1話と2話を撮りなおした、と。ブレークスルーになった瞬間とは。

パク・ボゴム:台本を読んでイメージはできても、時代劇の世子は一度も演じたことがない役なので、自信がなく、演じるほど難しく感じたのです。最初にテスト撮影をしたのですが、あまりにも何かが足りない気がして…。だから、監督とも何度もリーディングを重ねて役をつかむために努力しました。

僕が変わったのは、1話の最後に、ラオンと一緒に大きな穴に落ちたシーン。ヨンというキャラクターをはっきりとつかむことができたのは、その時です。台本を読んだ時に頭の中で想像するのですが、どう表現したらいいのかは現場にいかないとわからないですよね。穴の中に落ちた瞬間、空気や質感が世子の服を包み、イ・ヨンになりきれたような気がしたんです。穴の中にいるのは嫌だ、早く外に出なければ。心の底からそう感じた時、僕の中にヨンが重なったんです。

――相手役のラオンと、軽快な掛け合いをするシーンですね。

パク・ボゴム:あのシーンで、初めてアドリブをしたんです。「早く枝でももってこい」「次に会ったら許さないぞ」と、僕が言うとラオンが受け止めてくれて。不思議なことに、そこから二人の息がピッタリ合うようになったんです。

――初めての主演作だったので、少し緊張していたのでしょうか。

パク・ボゴム:そうですね。僕がこの作品を引っ張っていかなきゃ、うまくやらなきゃと、プレッシャーが大きくて。

――実は完璧主義かも?

パク・ボゴム:完璧主義というよりも、責任感が強く、すべての瞬間に全力を尽くそうとするスタイルなんです。残念な人にならないように、しっかり最後までやり遂げたい性格なので。完璧でありたいと思うけれど100%満足できず、完璧な存在ではないから。だからこそ、すべてにおいて最善を尽くそうと努力するのみです。

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――ヨン役で「国民の世子」と呼ばれるようになりましたが、キャラクターをどのように分析していますか。

パク・ボゴム:ヨンの多様な魅力を見せたい、と。天真爛漫で才能にあふれ、あたたかい心を持っている人物。会う人ごとに少しずつ変わる、細やかなところを演じたいと思いました。なぜならヨンはさみしい人だと感じたからです。周りには敵ばかりで、信じられる人がほとんどいない。その中でうまく決断し立ち回らなければならない。そんな姿を演じようと思いました。

僕と似ているところは、表面的には見えないかもしれませんが、家族を愛する気持ちがあるところ。心の中にあたたかさを秘めているところ。ラオンを愛する時、ストレートに打ち明けるタイプで、僕にも似ているところがあります。

――パク・ボゴムさん自身は、現場では周りの人をとても気遣うタイプだと聞いています。

パク・ボゴム:それは家族の影響も大きいですね。自分が何かをしてほしいと望むのではなく、相手に対して何をするべきか考えるのが大事だと教わったんです。いつもありがとうと言っていると、本当にありがたいことが起きるんですよ。ストレスがあっても、それは経験だと思ってポジティブに考えるといいことがあるのでは、と考えています。

――多才でいろいろな引き出しを持っていますが、目標としているスターは?

パク・ボゴム:うーん……。一人を選ぶのは難しいですね。尊敬する先輩ひとり一人の姿を見ながら、良い点を見習いたいという気持ちがあります。先輩方のインタビューを読みながら、学んでいます。

――最後に座右の銘を教えてください。

パク・ボゴム:「正直であれば、毅然とできる」。いつもそんな風に心がけています。

■パク・ボゴム

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1993年6月16日生まれ、182cm、O型。11年、映画「ブラインド」でデビュー。「ワンダフル・ラブ~愛の改造計画~」(13)「のだめカンタービレからネイルカンタービレ」(14)などに出演。最新ドラマ「ボーイフレンド」(18)では、11歳年上の女性に恋をする自由な魂あふれる青年を好演した。

パク・ボゴム特集ドラマウイーク 

■写真クレジット

「ボーイフレンド」(c)STUDIO DRAGON CORPORATION

「雲が描いた月明り」Licensed by KBS Media Ltd. (c)Love in Moonlight SPC All rights reserved

ライター・翻訳家

94年『101回目のプロポーズ』韓国版を見て似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画レビューやインタビューを「現代ビジネス」「AERA」「ユリイカ」「Rolling Stone Japan」などに寄稿。共著『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)、訳書『韓国映画100選』(クオン)『BTSを読む』(柏書房)『BTSとARMY』(イースト・プレス)『BEYOND THE STORY:10-YEAR RECORD OF BTS』(新潮社)他。yukuwahata@gmail.com

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