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「心の隙間を埋めていただく作品に」2PMジュノ 映画『薔薇とチューリップ』はファンに贈るプレゼント

桑畑優香ライター・翻訳家
クールな演技も上手だが、素顔はけっこう照れ屋!?

ステージでの力強いパフォーマンスは「俺様系」。ファンミーティングのトークなどでの笑顔は「子犬系」。

2PMの枠を超え、俳優として進化を続けるジュノ。彼の2つの魅力を堪能できる映画『薔薇とチューリップ』が公開中だ。初の邦画出演にして、初の一人二役。さらに原作は人気漫画「東京タラレバ娘」「雪花の虎」などを手がけた人気漫画家、東村アキコという豪華なタッグが実現した。

この作品について、唯一ジュノがファンの前で語ったのが、今年1月、パシフィコ横浜で開催された「ジュノ(2PM)in映画『薔薇とチューリップ』プレミアム上映イベント」だ。イベントでのジュノの言葉を振り返りつつ紐解く、作品、そしてジュノの魅力とは。

俺様系男子と子犬系男子がまさかの人生交換!?

ファンに向けてのプレミア上映の直後、ジュノは大型スクリーンをまるで温泉の暖簾をくぐるようにステージに登場。照れたしぐさに沸く観客に恥ずかしそうな笑顔を見せながら、「映画が終わってすぐにみなさんと会うのが緊張で。何をしたらいいのか、何を話したらいいのか、よくわからないんです」と、ドキドキしている様子。その姿は、まるで『薔薇とチューリップ』のデウォンが、スクリーンからそのまま抜け出してきたようだった。

そう、ジュノが『薔薇とチューリップ』で演じる一人二役のうち、ピュアなハートの韓国人留学生がデウォン。大好きな日本の温泉におひとり様旅行に出かけたデウォンは、個展開催のために来日した若手現代アーティストのネロ(二人はそっくり!)と大浴場で鉢合わせに。ネロの入れ知恵で入れ替わることになった正反対の性格の2人は、互いになりすます過程で、自分にとって大切なものを見つけていく……という胸キュン必至の成長ストーリーだ。

映画初主演作の『二十歳』(2015年)で演じたピュアな浪人生、最新ドラマ『自白(原題)』(2019年)で任された真実を追う弁護士など、幅広い役をこなすジュノ。彼の多面体の輝きを存分に味わうことができる作品に仕上がっている。

ジュノ自らの意向を反映したストーリー

なぜ、こんなにも「ジュノのツボ」を突く作品になったのか。

映画誕生には、約3年越しのプロジェクトがあった。

きっかけは、2016年。原作コミック連載中の「月刊! スピリッツ」(2019年6月号)などによると、2015年の映画『二十歳』でジュノの俳優としての実力を高く評価したNBCユニバーサル・エンターテインメントが、彼の俳優としての演技力を広く知らしめたいと、小学館に協力を要請。東村アキコ氏に、原作漫画の作成を依頼したという。

かねてより2PMファンで知られる東村氏は快諾し、“ジュノ主演”をイメージしたプロットとラフスケッチを複数案作成。その中から「よりファンの方々が喜ぶ作品を」というジュノ本人の意向を反映し、2017年末に『薔薇とチューリップ』のネームが完成した。それをもとにした脚本で日本での撮影を実施。ついに2019年、映画と漫画が公開となった。

ネロは旅館の跡取り娘かおり(谷村美月)と触れ合う中で自分の過去と向き合う(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan
ネロは旅館の跡取り娘かおり(谷村美月)と触れ合う中で自分の過去と向き合う(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan

主題歌の「Nothing But You」もジュノが本作のために書き下ろした曲。いわば、「2PMファンの漫画家とジュノによる、2PMとジュノファンのための映画と漫画」というわけだ。

まなざしで演じ分けた正反対キャラ

イベントでは、「マイ・フェイバリット・シーン」として、一人二役が際立つネロとデウォンが温泉で出会うシーン、デウォンの友人役で出演した2PMチャンソンと定食屋で食事をするシーン、デウォンがネロになりきるために特訓する場面をチョイス。緊張が重なる撮影が続く中、チャンソンが来て初めて何も考えずに笑えたことや、ミョンア役の玄理と、息を合わせながら楽しく撮影したエピソードを語った。

最大の見どころの一つは、キャラクターの異なる2人の主人公の見事な演じ分け。俺様系キャラのネロに扮したシーンの時は非の打ち所がないカッコよさにどよめきとため息が起き、子犬系キャラのデウォンを演じるシーンでは温かい笑いに包まれた。

「一人二役に初めてチャレンジしたのは、さまざまな姿を見せたいという一念からでした」というジュノ。「デウォンを演じるときはかわいく、素朴に。ネロの時は冷たくプロフェッショナルに。まなざしの違いに気を使いながら演じ分けました」と言いながら、イベントスタートから約30分にしてまだ少し緊張気味なのか、座っている椅子をくるくる。

「どちらのキャラクターも全部僕の姿。そうですよね? でも、悪い男を演じるのは難しいです(笑)」と語る姿に、優しいデウォンの面影が重なった。

この作品はファンへのプレゼント

堂々とした歌手としてのステージとは異なり、いつになく照れている様子が、意外であり、新鮮だったこの日のジュノ。

「新しい曲が仕上がるたびに、2PMメンバーに聴いてもらうんですが、その時もすごく緊張してしまうんですね。今日は曲だけでなく映画も同時に見ていただいたので、ずっと恥ずかしくて冷や汗をかいていました。でも、皆さんにたくさんのプレゼントを届けたいという思いで撮影しました。気に入っていただけたのか、すごく気になっています」

イベントでは温泉好きのデウォンにちなみ、ファン参加型のきき湯ゲームも(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan
イベントでは温泉好きのデウォンにちなみ、ファン参加型のきき湯ゲームも(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan

大きな拍手で観客が応えると、ジュノはうれしそうな笑顔で小さくうなずき、会場を見渡しながら、最後にこう思いを明かした。

「時間というのは本当に早く経っていくものだと改めて感じます。その分僕も早く戻ってくることができるだろうと思っています。しばらくの離れている間、皆さんにはネロとデウォンをたくさん見ていただいて、心の隙間を埋めていただく。そんな作品になればうれしいです」

日本語での演技もこなし、役者としての幅を広げたジュノ。多才で多彩な魅力を持つ彼が、さらなる進化と深化を遂げて再会の場に来る日が待ち遠しい。

(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan
(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan

映画「薔薇とチューリップ

(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan
(C)2018 東村アキコ・小学館/ NBCUniversal Entertainment Japan

シネマート新宿、シネマート心斎橋、名古屋センチュリーシネマにて公開中

配給:NBCユニバーサル・エンターテインメント

ライター・翻訳家

94年『101回目のプロポーズ』韓国版を見て似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画レビューやインタビューを「現代ビジネス」「AERA」「ユリイカ」「Rolling Stone Japan」などに寄稿。共著『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)、訳書『韓国映画100選』(クオン)『BTSを読む』(柏書房)『BTSとARMY』(イースト・プレス)『BEYOND THE STORY:10-YEAR RECORD OF BTS』(新潮社)他。yukuwahata@gmail.com

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