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新型コロナとインフルエンザ それぞれの流行状況、症状、重症化リスク、治療薬、感染対策について

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は減少傾向となっていますが、今度はインフルエンザが猛威を奮っています。

症状がよく似たこれら2疾患の流行状況、症状、重症化リスク、治療薬、感染対策についてまとめました。

インフルエンザと新型コロナの流行状況は

インフルエンザ流行レベルマップ(2月3日現在. 国立感染症研究所HPより)
インフルエンザ流行レベルマップ(2月3日現在. 国立感染症研究所HPより)

2023年2月3日時点で、新型コロナが流行して以降初めてインフルエンザの流行が拡大しています。

インフルエンザ注意報の目安となる定点あたり報告数10を超える地域が全国的に増えており、沖縄県(41.23)、福井県(25.38)、大阪府(24.34)、福岡県(21.70)、京都府(20.24)、石川県(17.52)、宮崎県(16.47)、兵庫県(14.02)、奈良県(13.93)、佐賀県(12.54)の順となっています。

現在流行しているのはインフルエンザAH3亜型というタイプのものです。

大阪の臨床現場でも「今日の外来は新型コロナよりもインフルエンザの方が多かった」という状況が増えてきました。

各地域の最新の流行状況については国立感染症研究所厚生労働省の情報をご参照ください。

新型コロナ新規感染者数および死者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめより)
新型コロナ新規感染者数および死者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめより)

新型コロナについては、10月以降感染が拡大しており年末年始には連日20万人を超える新規感染者数が報告されていましたが、1月上旬からは減少傾向となっており、現在は1日約4万人ほどの新規感染者が報告されています。

一時期よりは少なくなったとは言え、まだまだ感染者が多い状況です。

インフルエンザと新型コロナの症状に違いは?

新型コロナとインフルエンザに共通する症状(筆者作成)
新型コロナとインフルエンザに共通する症状(筆者作成)

どちらの感染症も、咳、ノドの痛み、鼻水などの気道症状、発熱、頭痛、筋肉痛・関節痛、だるさなどの全身症状が出現します。またどちらの感染症も、感染しても症状が出ない人が一定の割合でみられます。

新型コロナが出現した当初は、嗅覚・味覚の異常という特徴的な症状がありましたが、現在主流となっているオミクロン株では稀になっており、またノドの痛みや鼻水の頻度が高くなっていることから、症状だけで区別をつけることは困難となっています。

特に重症化リスクの高い人では、どちらの感染症なのかを区別して治療するために検査が必要となります。

インフルエンザと新型コロナの潜伏期の違いは?

新型コロナとインフルエンザの潜伏期の違い(筆者作成)
新型コロナとインフルエンザの潜伏期の違い(筆者作成)

潜伏期とは、ある病原体に感染してから、何らかの症状が出るまでの期間を言います。

インフルエンザの潜伏期は1〜4日(約2日)であり、新型コロナの潜伏期は流行初期は約5日でしたが、様々な変異株が出現して以降、だんだんと新型コロナの潜伏期は短くなってきており、オミクロン株では潜伏期が約3日になっています。

インフルエンザの潜伏期の約2日よりもまだ1日ほど長いものの、だんだんと近づいてきています。

ただし、潜伏期には人によってばらつきがあり、新型コロナでは最大で14日ほど経ってから発症する人もいます。

新型コロナとインフルエンザ、重症化リスクの違いは?

新型コロナとインフルエンザの重症化リスクの違い(筆者作成)
新型コロナとインフルエンザの重症化リスクの違い(筆者作成)

新型コロナに罹患したときに重症化リスクの高い方と、インフルエンザに罹患したときに重症化リスクが高い方は、ほとんどが共通しています。

新型コロナでは小児は成人と比較して重症化リスクは低いと言われていますが、インフルエンザでは5歳未満は重症化しやすいと言われています。小児ではインフルエンザ脳症などが問題となることがあります。

ただし、2022年に入ってからの20歳未満の新型コロナによる死亡者数はすでに60例を超えており、2009年の新型インフルエンザのときの20歳未満のインフルエンザによる死亡者数と同程度となっています。感染者数の多さ、流行の規模を考えると小児にとっては新型コロナも危険な感染症と言えます。

新型コロナなのかインフルエンザなのか、症状だけでは区別が困難であることから、いずれかの重症化リスクに当てはまる方は特に早めに診断・治療のために医療機関への受診をするようにしましょう。

新型コロナとインフルエンザ、どちらも早めの診断・治療が重要

インフルエンザと新型コロナの治療薬の比較(筆者作成)
インフルエンザと新型コロナの治療薬の比較(筆者作成)

インフルエンザには飲み薬(オセルタミビル、バロキサビル)、吸入薬(ラニナミビル、ザナミビル)、点滴(ペラミビル)など様々な剤形の治療薬があり、症状のある期間を短縮する効果が期待できます。

新型コロナでは、軽症の時期には重症化リスクのある人のみが対象となり重症化を防ぐ治療薬(レムデシビル、ニルマトレルビル、モルヌピラビル)と、重症化リスクのない人も対象となり症状のある期間を短縮する効果が期待できる治療薬(エンシトレルビル)とがあります。

新型コロナの治療薬は小児の適応が通っているものがなく、また多くが重症化リスクのある方のみが対象となっています。

インフルエンザは全ての方が処方の対象となりますが、ほとんどの方は治療薬なしでも良くなることや、下痢などの副作用がみられることがあるため実際に処方されるかは医師との相談となります。

いずれも重要なこととして、内服を開始するまでの有効な期間が限られていることです。

インフルエンザでは発症から2日、新型コロナでは薬剤の種類によって異なりますが3〜5日以内に内服を開始することで効果が発揮されます。

インフルエンザと新型コロナの感染経路、感染者から周囲にうつる期間の違いは?

新型コロナの感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021)より)
新型コロナの感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021)より)

どちらもウイルス性呼吸器感染症であり、ほとんどの場合は飛沫感染・エアロゾル感染によって広がります。

どちらも、感染した人が咳をしたり、くしゃみをしたりするときに排出される、ウイルスを含んだ大小の粒子が主な感染経路となります。これに加えて新型コロナでは唾液の中にもウイルスが多く含まれるため会話で発生する飛沫からも感染が起こることがあります。

他の人に触れたり(例えば、手にウイルスが付着した人と握手したり)、ウイルスが付着した表面や物体に触れた後、自分の口、鼻、目に触れることによって感染する可能性がありますが、新型コロナでは環境からの感染はほとんどないことが分かってきています。

インフルエンザは、主に症状が出た人から広がると考えられています。

インフルエンザの感染者は、発症から3~4日間が最も感染力が強いようですが、人によってはもう少し長い期間、感染力を維持することもあります。

学校保健安全法ではインフルエンザの出席停止期間は 『発症した後 5 日を経過し、かつ、解熱した後 2 日(幼児にあっては 3 日)を経過するまで』とされており、社会人もこれに準じて自宅療養することが望ましいでしょう。

インフルエンザと違い、新型コロナは症状が出る前から人に感染させることがあり、発症する前後が最も感染力が強いと考えられています。

発症後もしばらくは感染力が強く、発症10日目くらいまでは人にうつすことがあります。

現在は最短で発症日をゼロ日として8日目に自宅療養は解除となりますが、その後も数日間は周りに感染させないように注意しましょう。

新型コロナ、インフルエンザどちらも飛沫感染・エアロゾル感染と接触感染による感染症ですので、基本的な予防策は同じです。

接触感染についてはこまめな手洗い、飛沫感染・エアロゾル感染については屋内でのマスク着用、部屋の換気といった感染対策が重要です。

また、いずれの感染症にもワクチンがあります。特に新型コロナについては冬を過ぎた後も再び流行する可能性が高いため、ワクチン接種をご検討ください。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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