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新型コロナ後遺症 オミクロン株による第6波のピーク後に相談件数が増加

忽那賢志感染症専門医
新型コロナ後遺症でみられることがある症状(筆者作成)

オミクロン株を主流とした第6波は2022年2月上旬にピークに達しましたが、少し遅れて後遺症の相談件数も増えているようです。

新型コロナ後遺症にはどういった症状があり、どれくらいの頻度で、いつまでみられるのでしょうか?

新型コロナ後遺症とは?

新型コロナに感染した人の中には、数週〜数ヶ月間に渡って様々な症状が続く方がいます。

これらは海外では「LONG COVID」「Post-acute COVID-19 syndrome」などと呼ばれていますが、厚生労働省は「罹患後症状」と呼称し診療の手引きを作成しています(筆者も編集委員です)。

日本国内では「後遺症」と呼ばれることが多いため、ここでは新型コロナ後遺症という表現を使います。

なぜ新型コロナに感染した後に後遺症が起こるのか、まだ良くわかっていませんが、ウイルスに感染した組織(特に肺)への直接的な障害、感染によって免疫の調整機能に影響が起こることによる炎症の持続、血液が固まりやすくなる状態が続くことによる血栓症、集中治療後症候群(PICS)などが原因ではないかと推測されています。

新型コロナ後遺症の症状には、発熱や咳などのある急性期から続く症状と、経過の途中から出現する症状とがあります。

新型コロナ後遺症としてみられる症状には、

呼吸器症状:咳、痰、息苦しさ、胸の痛み

全身症状:倦怠感、関節痛、筋肉痛、しびれ

精神・神経症状:記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ

消化器症状:下痢、腹痛

脱毛

動悸

味覚障害・嗅覚障害

などがあります。

相談があった後遺症の症状の内訳(大阪府「新型コロナウイルス感染症の後遺症について」の資料より抜粋)
相談があった後遺症の症状の内訳(大阪府「新型コロナウイルス感染症の後遺症について」の資料より抜粋)

大阪府の新型コロナ受診相談センターへの7708件の後遺症に関する相談では、倦怠感、嗅覚障害、味覚障害、咳、呼吸苦、脱毛、頭痛といった症状が頻度が高くなっています。

新型コロナ後遺症の頻度は?

新型コロナの後遺症はどれくらいの頻度で見られるのでしょうか?

様々な報告がありますが、イギリスでの50万人以上の住民を対象にした新型コロナ後遺症に関する大規模調査では、新型コロナに感染して何らかの症状があった人のうち、37.7%で発症から12週時点でも症状が続いていたという結果でした。

後遺症は、特に

・女性

・高齢者

・新型コロナが重症だった人

・喫煙者

・肥満

といった人に見られやすいことが分かっています。

後遺症の相談事例の年代の内訳(大阪府「新型コロナウイルス感染症の後遺症について」の資料より抜粋)
後遺症の相談事例の年代の内訳(大阪府「新型コロナウイルス感染症の後遺症について」の資料より抜粋)

高齢者、重症であった人の方が後遺症が多いのは事実ですが、大阪府の後遺症の相談事例の内訳では、50代以下の世代が全体の8割を占めています。

これは、若い世代では重症化する人は少ないものの、感染者の母数が非常に多いためと考えられます。

特に若い世代では、嗅覚障害・味覚障害の後遺症に悩まれている方が多いようです。

オミクロン株でも後遺症は起こるのか?

後遺症の相談事例の月別の内訳(大阪府「新型コロナウイルス感染症の後遺症について」の資料より抜粋)
後遺症の相談事例の月別の内訳(大阪府「新型コロナウイルス感染症の後遺症について」の資料より抜粋)

現在主流になっているオミクロン株でも後遺症が見られることがあります。

大阪府の後遺症の相談件数は、これまで感染者のピークから少し遅れて増加していましたが、第6波の後も相談件数が増加しています。

オミクロン株を中心とした第6波では、ワクチン接種の影響もあり重症化する人の割合が減少しましたので、後遺症が起こる頻度も下がっている可能性がありますが、オミクロン株による後遺症の頻度についてはまだ良くわかっていません。

後遺症はいつまで続くのか?

発症からの日数と、少なくとも1つ以上の症状が続いている頻度(https://doi.org/10.1101/2021.09.22.21263998を元に筆者作成)
発症からの日数と、少なくとも1つ以上の症状が続いている頻度(https://doi.org/10.1101/2021.09.22.21263998を元に筆者作成)

日本国内での457人の新型コロナから回復した方の調査では、発症時もしくは診断時から6カ月経過時点で26.3%、12ヶ月経過時点で8.8%の人で少なくとも1つ以上の症状が残っていました。

つまり、半年後も4人に1人が、1年後も11人に1人が何らかの症状に悩んでいるということになります。

心血管系の合併症、関節症状、精子の減少などの後遺症も

新型コロナに感染すると、急性期の間に心臓の合併症として心筋炎心筋梗塞になるリスクが高くなることが分かっています。

しかし、新型コロナから回復した後の長期的な合併症のリスクについては、これまでは十分に分かっていませんでした。

アメリカの在郷軍人病院の新型コロナ患者および、非感染者とを比べた臨床研究では、感染から1年後の心血管系の合併症のリスクは、非感染者と比べて、

・脳梗塞 1.52倍

・不整脈 1.69倍

・心筋炎 5.38倍

・心筋梗塞 1.63倍

・肺塞栓 2.93倍

・深部静脈血栓症 2.09倍

と軒並み高くなっていることが明らかになりました。

新型コロナが重症であった患者の方が、これらの合併症の頻度が高くなっていましたが、軽症であった人でも少なからずリスクが高くなっていました。

スウェーデンで新型コロナに感染した100万人と、感染していない400万人とを比較した研究でも同様に、新型コロナに感染した人は深部静脈血栓症では発症後70日間、肺塞栓症では発症後110日まで、出血では発症から60日まで合併症のリスクが高くなることが分かりました。

このように、感染した後もしばらくは心血管系の合併症が起こりやすくなるようです。

この他にも、広義の後遺症として、

といったことも報告されています。

新型コロナ後遺症にならないためには

新型コロナにはワクチンや治療薬が使用できるようになっており、感染を防いだり重症化を防ぐことができるようになってきました。

一方で後遺症については、なぜ起こるのか、どうすれば防げるのか、どうすれば症状が良くなるのか、といったことがまだ分かっていません。

この後遺症はアメリカでも深刻な問題となっており、バイデン大統領は後遺症の治療や予防などに関する研究を加速させるよう指示を出した、と報道されています。

日本においても、後遺症の治療や予防は解決されるべき重要な問題です。

現在のところ、新型コロナ後遺症を防ぐためには、新型コロナに感染しないこと、感染した場合も重症化しないことが重要になります。

・屋内ではマスクを装着する

・3密を避ける

・こまめに手洗いをする

といった基本的な感染対策を心がけましょう。

また、新型コロナワクチンを接種することで感染した場合も後遺症が起こりにくくなると考えられています。

後遺症を防ぐためにも新型コロナワクチンの接種をご検討ください。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作成)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作成)

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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