mRNAワクチンなどの新型コロナワクチンは接種が開始されてまだ1年経っていないことから、長期的な安全性について心配されている方も多いと思います。

新型コロナワクチンの長期的な安全性について何か懸念があるのでしょうか。

一般的にワクチンの副反応は数週間以内に起こる

副反応の種類と起こりやすい期間(国立国際医療研究センター 予防接種基礎講座「予防接種後の有害事象対応」より筆者作成)
副反応の種類と起こりやすい期間(国立国際医療研究センター 予防接種基礎講座「予防接種後の有害事象対応」より筆者作成)

ワクチン開発のペースが極めて速かったため、追跡調査は現時点では1年未満です(mRNAワクチンの臨床試験はいずれも2020年の夏に開始されました)。

このため長期的な副反応についてご心配の声をよく聞きます。

しかし、これまでのワクチンでは、重篤な副反応は通常、投与後数日から数週間以内に起こります。

例えば接種直後に起こる迷走神経反射やアナフィラキシー、接種当日から2日後くらいに起こる接種部位の痛みや発熱、頭痛などです。

生ワクチンという種類のワクチン、例えば麻しんワクチンや風しんワクチンは、弱毒化させたウイルスをワクチンとして接種するため、接種後数週間経って発熱などの症状が出ることもあります。

この期間を超えた、ワクチンによる長期的な副作用は非常にまれであり、これまでワクチンの長期的な副反応ではないかと疑われたものも、その後の科学的な検証によって否定されています。

mRNAは数日以内に分解される

mRNAワクチンが効果を発揮する機序(DOI: 10.1056/NEJMoa2034577)
mRNAワクチンが効果を発揮する機序(DOI: 10.1056/NEJMoa2034577)

mRNAワクチンでは、mRNAというタンパク質を生成するために使用する情報細胞を運ぶ設計図が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白、つまりウイルス表面のトゲトゲした突起の部分を作る指示を伝える役割を果たしています。

ワクチンが接種されると、mRNAは注射部位近くのマクロファージに取り込まれ、細胞内のリボソームという器官がmRNAの情報を読み込み、スパイク蛋白を作ります。

その後、スパイク蛋白はマクロファージの表面に現れると、このスパイク蛋白に対する抗体が作られたりT細胞を介した免疫が誘導されることで、新型コロナウイルスに対する免疫を持つことができます。

生きたウイルスはワクチンの中には入っておらず、また遺伝情報を体内に接種すると言っても、mRNAはヒトの細胞の核に入ることができず、そのためヒトの遺伝子の情報に変化が加わることはありません。

またmRNAは接種後数日以内に分解され、作られるスパイク蛋白も接種後2週間でなくなると言われています。

こうしたmRNAワクチンの機序からは、接種後1年以上が経ってからの副反応は想定されていません。

mRNAワクチンそのものは長期的なデータがある

mRNAワクチンは新しいプラットフォームのワクチンではありますが、全く新しい技術というわけではありません。

研究者たちは何十年も前からmRNAワクチンを研究しており、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、狂犬病ウイルス、サイトメガロウイルスなどでmRNAワクチンの研究が行われてきました。

さらに、がん研究では、免疫系が特定のがん細胞を標的にするきっかけとしてmRNAを利用しています。

これらの何十年にもわたるmRNAの研究では、長期的な副作用は認められていません。

ワクチンが男性不妊・女性不妊の原因となる懸念も現時点ではない

海外からは男性が新型コロナに感染すると精子数が減少するという報告が出ていますが、mRNAワクチンを接種しても精子は減少しなかったという報告がアメリカから報告されました。

現時点ではワクチン接種によって男性不妊になるという懸念はありません。

女性不妊になる根拠はないと河野大臣も述べられていますし、mRNAワクチンを接種した約4000人の妊婦さんの安全性に関する報告では、特に先天奇形や早産・流産が増えるといったこともなさそうです。

安全性について長期的に調査・監視し結果を公開することが重要

以上のことから、mRNAワクチンの長期的な安全性についても特段の懸念はないと考えられていますが、もちろん100%安全と言い切れるものではありません。

かつて日本は「京都・島根ジフテリア事件(1948年)」「種痘禍問題(1970年)」などワクチンによる社会問題を経験した過去があります。

予想されていなかった副反応が起こる可能性も排除できないことから、ワクチン接種後も長期的に調査・監視を実施し、その結果をオープンに公開する体制が必要です。

とはいえ、「ぱねえ効果」を持つmRNAワクチンです。

現時点で長期的な安全性が懸念される根拠があるわけではない以上、それを理由に過度に恐れて接種する機会を逃すことはご自身にとって不利益となるかもしれません。

ご自身にとってのワクチン接種のメリットとデメリットを正しく吟味した上で、接種についてご検討ください。