中国の新型コロナウイルスを必要以上に恐れなくても良い3つの理由 感染症医の視点から

写真はMERSコロナウイルス(写真:Cynthia Goldsmith/Maureen Metcalfe/Azaibi Tamin/Centers for Disease Control and Prevention/ロイター/アフロ)

最新情報はこちらに整理しています

以下は1月11日以降アップデートされていない情報ですのでご注意ください!

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中国の湖北省武漢市でウイルス性肺炎による患者が発生しているニュースが連日流れています。

1月9日、WHO(世界保健機関)は武漢市で発生している肺炎患者の数名から新型コロナウイルスが分離され、肺炎の原因である可能性があると発表しました。

WHO Statement Regarding Cluster of Pneumonia Cases in Wuhan, China

現時点ではWHOはこの新型コロナウイルスが原因だとは断定していませんが、現地の専門家チームはかなり可能性が高いと考えているようです。

さて、新型コロナウイルスと言うと何だか恐ろしい感染症をイメージされるかもしれませんが、現時点で必要以上に恐れるなくても大丈夫です。

なぜなら、今回の武漢市での肺炎の流行では、

・1月2日以降、新規発症例は出ていない

・ヒトーヒト感染は報告されていない

・SARSやMERSほどの重症度ではなさそう

だからです。

1月2日以降新規発症例は出ていない

武漢市の1月5日の発表によれば、

・2020年1月5日8:00時点で59人の原因不明のウイルス性肺炎患者が武漢市で報告されている。

・この59人の患者のうち、最も早く発症した症例は2019年12月12日であり、直近の発症者は12月29日である

・一部の症例と関連していると考えられる華南海産物市場(華南海鮮城)は閉鎖した

出典:原因不明のウイルス性肺炎に関する武漢市保健委員会の報告(中国語 2020/01/05)

とのことであり、12月29日以降、すでに10日以上は新たな肺炎症例は報告されていません(※先日報告されたタイでの症例は1/5発症とのことですので、これを含めると最後の発症者は1/5となります)。

また感染源と疑われている海産物市場は閉鎖されていますので、これから新規症例がたくさん出てくる可能性も低いと考えます(これまでに見逃されていた症例は出てくるかもしれませんが)。

タイでの輸入例についての報告. WHO

Novel Coronavirus - Thailand (ex-China)

ヒトーヒト感染は報告されていない

これまでのところ医療従事者の感染例も含め、明らかなヒトからヒトへの感染は報告されていません。

コロナウイルスといえばSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)もコロナウイルスによる感染症であり、SARSやMERSは特定の状況下ではヒトからヒトに感染することがあります。

とするとこの新型コロナウイルスもヒトからヒトにうつる可能性があるのではないかと思われるかもしれませんが、今のところはそういった事例はないようです。

また、もし仮にヒトーヒト感染をするようなものであったとしても、これまでのSARSやMERSの感染伝播の歴史的事実を考慮すると、病院内など特定の場所以外ではヒトーヒト感染が起こることは稀と考えられます。

韓国でのMERSの広がり The Korean Broadcasting System (KBS) News channelより
韓国でのMERSの広がり The Korean Broadcasting System (KBS) News channelより

2015年に韓国でMERSがアウトブレイクした際には、二次感染者は全て病院などの医療施設内で感染していることが分かっています。

SARSでも病院内で広がりやすい特徴があります。

ですので、もし仮にこの新型コロナウイルスがヒトーヒト感染するとしても(そういう事実はまだありませんが)、例えばすれ違うくらいで感染する可能性は高くなく、市中で爆発的に拡散する可能性は低いと考えます。

なお、台湾、シンガポール、香港、韓国では疑い例に関する報道が出ていますが、現時点でこの武漢市での流行に関連した肺炎と確定診断された方はいません。

SARSやMERSほどの重症度ではなさそう

武漢市の発表では、

・2020年1月5日8:00時点で、59人の肺炎患者のうち7人が重症であり、残りの患者は安定している。

・死亡例なし。

出典:原因不明のウイルス性肺炎に関する武漢市保健委員会の報告(中国語 2020/01/05)

・新型コロナウイルス感染症による肺炎41症例が診断され、そのうち2症例は退院し、 7例が重症、1例が死亡した、残りの患者は安定している。

出典:武漢市保健衛生委員会の原因不明のウイルス性肺炎に関する報告書(中国語 2020/01/11)

とのことであり、重症化した方はいるものの、死亡例は出ていません(※1/11の発表で1名亡くなったようです)。

SARSの2003年の流行では8096人が感染し、774人が亡くなられています(致死率9.6%)

またMERSではこれまで2494人の方が感染し858人の方が亡くなられています(致死率34.4%)

SARSやMERSでは持病を持っている方は特に重症化しやすいとされており、もしかしたら今後、武漢市での新型コロナウイルスによる肺炎患者の方からも、持病をお持ちの方などが亡くなられる可能性はあるかもしれませんが(※1/11の発表で1名亡くなった方は肝疾患と腹部腫瘍をお持ちの方だったようです)、これまでのSARSやMERSと比べると現時点では重症度は高くないと考えて良いと考えます。

こうした未知の感染症と聞くと、自分も感染するのではないかと不安になるかと思いますが、大事なのは信頼できる情報源から正しい情報を入手し、正しくリスクを評価し、正しく感染症を恐れることです。

引き続き今後の情報を注視する必要はありますが、今の時点で過度に恐れる状況ではありません。

武漢に渡航された方、これから渡航される予定の方については以下の点にご注意ください。

武漢へ渡航した方

・帰国後数週間(※潜伏期不明のため)は健康状態を注意深く観察し、体調不良時はすぐに病院を受診しましょう。その際には必ず渡航歴を医師に知らせるようにしましょう

・咳や鼻水、喉の痛みなどの呼吸器症状がある場合は、マスクを着用しましょう。マスクがないときも咳エチケットを徹底するようにしましょう

武漢に渡航する予定の方

・家禽や野生動物との接触、生肉や調理が不十分な肉の摂取は避けるようにしましょう

・現地で体調の悪い人、病人との接触は避けるようにしましょう

・食事やトイレの後など手洗いをこまめに行いましょう

参考:

厚生労働省検疫所 FORTH-原因不明の肺炎-中国

厚生労働省. 中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明肺炎の発生について

帰国後診療医療機関リスト - 日本渡航医学会