薬剤耐性について知っていますか?

筆者撮影(姪っ子の手です)

「薬剤耐性」って何か知っていますか?

「抗菌薬(抗生物質)の不適切な使用は薬剤耐性(Antimicrobial Resistant: AMR)の問題になる」。このような話を近年よく見聞きするのではないでしょうか。では皆さんは薬剤耐性とはなにか説明できますか?

先日、薬剤耐性に関する日本医療政策機構による世論調査が行われました。一体何割の方が薬剤耐性について知っていると答えたと思われますでしょうか?

6割の人が薬剤耐性について知っていると回答

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14%の人が「薬剤耐性について詳しく知っている」、47%の人が「薬剤耐性という言葉だけ知っている」、計6割もの人が薬剤耐性について知っていると回答したとのことです。私はこの結果を見て感動のあまり涙を流しました。例えるなら6割の人が「つみたてNISAについて知っている」と同じくらいインパクトがあります(※個人の印象です)。世間の6割の方が薬剤耐性について詳しく知っていたら日本の薬剤耐性問題は解決したも同然です。

しかし、この「薬剤耐性という言葉だけ知っている」と回答された47%の方だけでなく、「薬剤耐性について詳しく知っている」と回答された14%の方でさえ薬剤耐性を正しく理解されていない可能性がありますッ!私がNISAをなにかの果物だと思って「やっぱりニーサは摘みたてがおいしいのか・・・」と勘違いしていたように(間違って「もぎたてNISA」と言ったことがあります)、もしかしたら皆さんは「薬剤耐性」について誤解しているのではないでしょーか!

ある医学誌に掲載された研究でも同様に各国に住む一般の方の抗菌薬や薬剤耐性についての知識の調査を行っています。ここでも7割の人が薬剤耐性について知っている、あるいは聞いたことがあると答えているのですが、このうちの9割の方は薬剤耐性というのは(菌の問題ではなく)人体に起こる変化だと思っていた、ということが分かったのです。つまり、薬剤耐性を「睡眠薬を毎晩飲んでるとだんだん効きづらくなってくる」現象と同じものだと思っていたわけですね。

薬剤耐性は人体ではなく微生物側に起こる変化

薬剤耐性とはなにかと言いますと、細菌(などの微生物)が抗菌薬(をはじめとした抗微生物薬)に効かなくなることを指します。人体の変化ではなく、微生物側に起こる変化というわけですね。

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出典:Centers for Disease Control and Prevention

私たちの体はたくさんの微生物と共存しています。口の中、皮膚、腸の中などには無数の細菌が存在しており(細菌叢と言います)、食べ物の消化を助けたり、外部から侵入する悪い菌の増殖を防いだりしています。私たちが病原菌によって感染症にかかり、病原菌をやっつけるために抗菌薬Aが体に入ると、病原菌だけでなくこうした私たちに無害な細菌叢にも影響がみられます。抗菌薬Aによって細菌叢が減り、細菌叢の中にいた抗菌薬Aに耐性のある腸内細菌が腸の中で相対的に増えることもあります。常在菌である腸内細菌は腸の中にいる間は無害です。しかし、例えば腸内細菌が会陰部から逆行して侵入することで膀胱炎になることがあります。つまり、抗菌薬Aを使った影響で腸の中で増えた抗菌薬A耐性腸内細菌が膀胱炎の原因になることがあるのです。抗菌薬を使用することで、薬剤耐性菌による感染症を発症する危険性があるというわけです。抗菌薬は細菌による感染症の治療にとって大事なものですが、必要がないときには使わないことが重要なのです。

かぜやインフルエンザに抗菌薬は効く?

さて、先ほどの日本医療政策機構による世論調査では、薬剤耐性に関する質問と一緒に、かぜやインフルエンザについての調査もありました。「抗菌薬はかぜやインフルエンザに効果がないって知っていますか?」というものです。どのくらいの方が知っていたと思いますか?

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この質問には49%の人が「知っている」と答えています。つまり半分の方はかぜやインフルエンザに抗菌薬が効くと思っているということになります。2018年に一般の方10代~60代の男女721名を対象に行ったAMR臨床リファレンスセンターの調査でもやはり約50%の人がかぜやインフルエンザに抗菌薬が効くと回答しており、さらに3割の人が「かぜで受診したときに抗菌薬を希望する」と回答しています。しかし、あなたの希望通りに抗菌薬を処方してくれる医師が必ずしも良い医師とは限りません!かぜのときに不必要に抗菌薬を飲むと、かぜに効かないばかりか薬剤耐性菌を保有することに繋がります。抗菌薬は必要なときにはしっかり使い、必要ないときには温存することが大事です。薬剤耐性について、そしてかぜやインフルエンザに抗菌薬が効かないことについて、一般の方が知っておくことは未来に抗菌薬を残すためにもとても大切です。