ちょっと細かい実務上の話ですが、割と重要性が高いと思いますので記事化しておきます。

かつては、地名を含む商標の審査は結構大らかで、海外製の商品でもないのに海外の地名を含む商標が登録されてしまうケースが普通にありました(これらの商標にはもう業務上の信用が化体していますのでそこに文句を付けるつもりはありません)。しかし、最近は、地名を含む商標の審査は結構厳しくなっており、たとえば、「フランスxxx」のようなタイプの商標を洋服を指定商品にして出願すると、「この商標をフランス製以外の洋服に使うと、品質誤認(4条1項16号)に相当するので、指定商品を”フランス製の洋服”等に限定せよ」という拒絶理由が通知されることが多いです(関連審査基準)。

ここで、指定商品を「フランス製の洋服」に補正して商標登録しても、商標の禁止権は類似範囲まで及びますので、第三者に類似する名前を勝手に使われた場合、日本製の洋服だろうがベトナム製の洋服だろうが、商標権の効力は及びますので、権利行使という観点では、あまり気にする必要はありません。

しかし、第三者から不使用取消審判を請求された場合に取消を免れるための自己の使用証拠については、類似範囲の使用では駄目で、商標も指定商品も同一のものの使用でなければ認められませんので、話がややこしくなります。

特に、消費者に「フランス製のブランド」と認識されているケースでも、実際には製造は中国やベトナムなどで行われていることはよくあるので注意が必要です。

先日に判決があった、"IRO PARIS"という登録商標(権利者は、IROというフランスのアパレル会社)に対する不使用取消審判(請求人は、iROO Internationalという台湾のアパレル会社)の審決取消訴訟では、商標の指定商品が(審査段階の補正によって減縮され)「フランス製の被服」等となっていたところ、商標権者が提出した使用証拠の商品がフランス国内で生産された商品ではないことから指定商品の使用とは認められず、商標登録が取消になってしまいました。

商標権者は、フランスの会社がデザインし、自らの責任で品質管理している商品であれば、フランス製と同一視すべきと言った主張をしましたが、認められませんでした(これはちょっと厳しいと思います)。判決文では、「フランスにてデザインされフランス国法人としての出願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産された被服」というように補正していれば、不使用取消を免れた」としていますが、商標権者としては(審査段階で”フランス製の被服”に補正しろと示唆されて従ったのに)「今、言われても..」という心境ではないでしょうか?

結局、その後、この権利者はすべての指定商品に「フランスにてデザインされフランス国法人としての出願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産された」と枕詞をつけた同じ商標の出願を行って無事登録できています(特許庁の審査段階で審査官がていねいにもこういう風に補正した方がよいのではと示唆してくれています)。

ということで、地名を含む商標で、指定商品を「~製の」と限定する場合には、不使用取消に注意が必要というお話でした。審査段階で、「靴」をたとえば「イタリア製の靴」に限定せよと審査官が示唆してくれた場合でも、「イタリア製の靴」に加えて、「イタリアにてデザインされイタリア国法人としての出願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産された靴」も指定しておくと、不使用取消を請求された時もより安心です。