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アップルによる「キーボードのキーをはずしてマウスにする特許」の権利範囲について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:US11275451公報

「キーボードから取り外したキーをマウスとして使うトンデモな技術、Appleが特許を取得」という記事を読みました。「キーボードのキーを分離させ、マウスまたはポインティング・デバイスとして使用できる技術」とのことです。

単なる公開ではなくて権利化です。特許番号はUS11275451です。登録日は2022年3月15日、出願日は2020年2月9日、発明の名称は”DEPLOYABLE KEY MOUSE”(展開可能なキー・マウス)です。

発明の目的は、ノートPCにおいて、精密なデザイン作業等に通常のマウスを使いたいが、別途マウスを持ち運ぶのは面倒というケースに対応して、キーボードの一部を脱着してマウスとして使えるようにするという「そのまんま」のアイデアです。タイトル画像に示したように、脱着のバリエーションとしていくつかのパターンが開示されています。

確かにノートPCで予備的に使うマウスをうまく格納できる仕組みがあれば便利と思いますが、普通に本体の筐体に収納部を設けて格納する方が現実的ではないかと思います。キーボードのキーと兼用にすると、大きさと形状的にマウスとしては使いにくいそうですし、マウスとして使っている時はそのキーが使えなくなりますし、電源やBluetoothのスペースの問題もありますし、メカ的にも故障の可能性が増えるだけなのであまり意味がないように思えます。思いついたのでとりあえず出願してみましたという特許のような気がします(アップルでも出願ノルマがあるのか、この手の特許が結構あります)。

とは言え、権利範囲としては結構広いです(今までにこのようなアイデアを特許化しようと思う人がいなかったということと思います)ので、思いも付かなかったような態様(たとえば、ゲーム機のコントローラなど)で侵害してしまう可能性があるかもしれません。

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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