Yahoo!ニュース

META Platforms(旧Facebook)、米国でMETA関連商標権を買いまくりか

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:USPTO TESS検索結果

Facebookが社名(および、Oculus関連のブランド)をMETAという比較的ありがちな名前に決めてしまったことによる商標登録(および、他社からの商標権行使)上の課題については既に書きました。正式な社名はMETA Platforms, Inc.になったようですが、VR関連商品のブランドとしてはMETAを使用するのでこの課題は変わりません。

さて、現時点で米国特許商標局にMETA Platforms社名義で出願・登録されている商標を調べたところ興味深いことがわかりました。以下がそのリストです(Yahoo!ニュース個人のオーサリングシステムの機能上の制約により表組みが組めないので画像になってしまってすみません)。

出典:USPTO TESS検索結果
出典:USPTO TESS検索結果

まだReg Number(登録番号)が割り当てられていない最初の5件はMETA Platforms社自身が出願したものです。それ以下は、すべて、既に登録されている商標を、権利者(たとえば、Meta Thread、MetaVR、Meta Company、Metacafeといった会社です)からMETA Platforms社が譲渡してもらったものです。当然、それなりの対価が支払われたものと思いますが契約条件は外部からはわかりません(追記:よく調べるとこの譲渡はいったんBeige Key LLCという会社を経由して今年の8月頃から行われていました。Facebookの名前を出すと当然に価格をふっかけられるのでダミー会社を経由して取引したということでしょう。ただ、このやり方はもう使えないですね。)

また、これに関連して、Meta PC, LLCというアリゾナのスタートアップ企業がMETAという登録商標(このリストには載っていません)の譲渡に2,000万ドルを要求したというニュースもありました(要求しただけでFacebook側が条件を呑んだわけではありません)。

一般に、新たにブランド名を決めるときには、できるだけ先登録商標とかぶらないように決めるのですが、Facebookの場合は「かぶり上等、要は金目の問題」ということなのでしょう。たまたまMETA商標を所有していた企業にとってはとんだ「棚ぼた」でした(追記:上記のとおり、Beige Key LLC経由であれば通常の価格設定であって「棚ぼた」とまでは言えないかしれません。売却した企業はFacebookと知っていればもっとふっかけたのにと思っているかもしれません)。

Facebook(META Platforms)がグローバル企業であることを考えると、米国外でもこのような「棚ぼた」が起きる可能性は十分にあります(もう起きているかもしれません)。なお、これからあわててMETAの商標を出願しても、パリ条約優先権制度によりMETA Platforms社の本来の出願の先願になることはできませんし、商標法4条第1項19号(海外・国内周知商標の不正使用目的)違反で拒絶になる可能性が大なので無駄と思われます。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔のIT特許分析レポート

税込880円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

栗原潔の最近の記事