ユニクロ、セルフレジ特許の完全無効化に失敗

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

昨年の10月に、「ユニクロのセルフレジ特許侵害訴訟について」という記事を書いています。RFIDを使用したセルフレジ機器に関して、アスタリスクというITソリューション開発企業が特許権侵害でユニクロを訴えたという話です。

この訴訟への当然の対抗措置としてユニクロがアスタリスク社の特許(6469758号)の無効審判を請求していたのですが、その審決予告が6月5日に出ています(特許6469758号のリンクから経過情報をクリックすると内容が見られます)。この特許の基本的アイデアは、セルフレジのRFIDタグのリーダー部を平置きではなく籠状にすることで電波の干渉を抑制するという一見自明なものなので、新規性・進歩性の欠如による無効化は容易に思えましたが意外とそうでもありませんでした。

結論から言うと、メインの独立クレームの請求項1は、米国の特許公報等の情報を元に進歩性を欠くとして無効になるとの予告がされました(これに対して、まだ、アスタリスク社側には訂正により権利範囲を縮小して対抗する余地があります)が、従属クレームの請求項3は無効になりませんでした。

請求項1(訂正後)および請求項3の内容は、以下のとおりです。

【請求項1】

物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、

 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、

 上向きに開口した筺体内に設けられ、前記アンテナを収容し、前記物品を囲み、該物品よりも広い開口が上向きに形成されたシールド部と、

を備え、

 前記筺体および前記シールド部が上向きに開口した状態で、前記RFタグから情報を読み取ることを特徴とする読取装置。

【請求項3】

前記シールド部は、

 前記電波を吸収する電波吸収層と、

 前記電波吸収層の外側に形成され、前記電波を反射させる電波反射層と、

を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置。

ということで、結構範囲が広いクレームが残ってしまいました(シールドを籠状にするという元々の発明のポイントはほぼそのままです)。ユニクロのセルフレジ機器が、限定がかかった請求項3に依然として抵触するのか、あるいは、仮に抵触していたとして設計変更によって抵触を回避できるのかは外部からは不明です。また、もし回避するとするならば、電波反射層をなくすとそもそもシールドの役割を果たさなくなるので、電波吸収層をなくすか、あるいは、電波反射層と電波吸収層の順番を変えるかしかないように思えますが、これが、現実的かどうかは実際の機器の設計者でないと判断しかねるところがあります。

裁判の結果が最終的にどうなるかはわかりませんが、いずれにせよ、この特許、如何にも当たり前に見えて、実はそう当たり前ではないという点で強力(訴えられた方としてはやっかい)という状況は変わっていないように思えます。

追記:アスタリスク社へのインタビューを含むダイヤモンドオンラインの記事が公開されています。また、昨年の訴訟提起時の記事も参考になります。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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