ソニーのコンパニオンロボットの発明は技術的にどこが新しいのか?

特開2018-187712公報

「ソニー、ユーザーの感情に反応するモコモコなゲーム用コンパニオンロボット--特許出願」という記事を読みました。「ゲームをプレイ中のユーザーが喜んだり、悲しんだり、驚いたりしたら、それに合わせて一緒に反応してくれるコンパニオンロボットが実現できる。」という発明の出願公開が、ちょっとインパクトのある図面(タイトル画像)と共に紹介されています。なお、同じネタを扱った他記事には「登録された」と書かれているものがありますが、出願が公開されただけで登録されたわけではありません。

記事中に挙げられているのは、米国の出願公開(US 2020/0114520 A1)ですが、この出願は、国際出願(PCT/JP2018/016759)「オブジェクト制御システムおよびオブジェクト制御方法」の国内移行です。そして、この国際出願は、日本国内出願(特願2017-091909に優先権を主張していますが、この国内出願は国内優先権による取り下げなしにそのまま生き残って審査係属中です(審査請求は出されていますがまだ特許庁からの通知はありません)。なお、米国特許の方も米国特許商標庁からの通知はありません。

ということで、この特許の中身を知るためは英語を読む必要はなく、PCT/JP2018/016759または特願2017-091909 (=特開2018-187712)の日本語を読んでいけばよいことになります。

上記明細書の「背景技術」には以下のように書かれています。

他人と良好な関係を構築するために、「向かい合う関係」ではなく、共に同じ物を視る「共視体験」が有効であると言われている。同じ場所で同じ物を視て互いに共感することで、他人との距離は縮まり親近感が高まることが知られている。

また、「発明が解決しようとする課題」としては以下のように書かれています。

本発明者はロボットをユーザの共視体験者として活用する可能性に注目した。たとえばユーザによるゲームプレイ中、ロボットがユーザの横でゲームプレイを観戦し、ユーザと一緒に喜んだり悲しんだりすることで、ユーザのロボットに対する親近感が高まり、またゲームをプレイすることへのモチベーションが向上することが期待される。またゲームに限らず、映画やテレビ番組等に関しても、ユーザはロボットと一緒に視聴することで、一人で視聴する場合と比較して、コンテンツをより楽しめることも期待される。

特許の話は別として、ロボットというテクノロジーの応用分野という観点から考えてみるとなかなか目の付け所が良いのではと思います。現時点においてPepperなどの家庭用ロボットはビジネス的に成功したとはとても言えない状況です。その大きな理由のひとつは魅力的な用途、いわゆる、キラー・アプリケーションがないということでしょう。単にそれっぽい会話ができるというだけでは、最初はおもしろくてもすぐに飽きてしまいます。また、たとえば、企業で受付業務に使うとは言っても「タブレットを音声操作するのとどこが違うのか?」と聞かれてしまうと返答に窮してしまいます。

特許が取れるか取れないかは技術を自社で独占できるかどうかの話であって実施できるかどうかには直接関係ありませんので、ソニーが今後このようなタイプのロボットを売り出す可能性は十分にあるでしょう(費用をかけて特許出願するということはビジネス的な目論見があってのことだからです)。その点では期待が持てます。

さて、特許の話に戻ります。「発明が解決しようとする課題」に書かれていることはよくわかりますが、問題は、このような課題解決を行なうための技術が明細書にある程度具体的に書かれているか、そして、そのような技術には新規性・進歩性があるのかということです。

発明の目的を明確にするのは重要ですが、その分野の技術者であれば、その目的を達成する技術を実現できるレベルの説明が明細書に記載されていなければなりません(所謂、実施可能要件とも呼ばれる要件です)。目的や機能だけが書かれており、明細書に十分な記載がないクレームを俗に「願望クレーム」と呼び、実施可能要件欠如で拒絶になってしまいます。「願望クレーム」がOKなら「空飛ぶ絨毯」だろうが「癌の特効薬」だろうが何でも特許化できてしまいますのでこれは当然です。

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