しんじょう君とちぃたん☆の類似性について

出典:特許情報プラットフォーム

「須崎市の”ちぃたん☆”使用停止申し立てが却下 “権利侵害”に当たらず」というニュースがありました。

高知県須崎市がゆるキャラ「ちぃたん☆」の使用停止を東京地裁に仮処分を申し立てていた件について、同裁判所は20日、「ちぃたん☆」のデザインしようが須崎市側の主張する「権利を侵害するもの」ではないとして、申立を却下する旨を決定した。「ちぃたん☆」のマネジメント会社が発表した。

ということです。須崎市の公認ゆるキャラであるしんじょう君と(ほぼ確実に同じ作者の作品と考えられる)ちぃたん☆が酷似していることを理由として、須崎市側が著作権侵害による使用停止を求めていたものです。なお、仮処分なので、今後、本訴で結論が覆る可能性はあります。

一般に、著作権侵害が認められるためには、1) 対象が著作物であること、2) 著作権保護期間内であること、3) 対象が類似していること、4) 依拠性があること(偶然の一致ではないこと)、5) 特別な権限がないことが必要となります。今回のケースでは、1)、2)、4)については議論の余地なく成立するでしょう。3) については一見似ていても、共通部分がアイデアに過ぎなかったりありふれた表現であったりする場合には、著作物として類似とされない場合も多くありますが、今回のケースで言えば、この作者の個性が表れている目の表現等がそっくりなので、著作物として類似とされる可能性はかなり高いと思います(余談ですが、キャラクターとしてはいずれもとても魅力的な作品と思います)。

しかし、上記記事中におけるちぃたん☆の事務所側の発言(「『ちぃたん☆』デザインの使用は須崎市側のご許可のもとでなされていたこと、須崎市側が『ちぃたん☆』が商業活動を行っていることを認識し容認されていたこと…」)を見ると、今回の仮処分では、しんじょう君とちぃたん☆の類似性については論じられず、5)のポイント、つまり、須崎市の許諾が有効かという点のみが争点になった可能性が高いと思われます(権威者の許諾があれば類似性があろうがなかろうが差止めは認められませんので、訴訟経済の観点から、通常は類似性が議論されることはありません)。どう言う事情かわかりませんが、著作権を買い取ったキャラの類似キャラの自由な使用を許諾するというのは、民間ではちょっと考えられない話かと思います。

余談ですが、この機会に両キャラの商標登録出願の状況についてもご紹介しましょう。須崎市によるしんじょう君の商標は第5978539号として2017年9月に商標登録済です(タイトル画像左参照)。一方、ちぃたん☆は商願2017-165376(タイトル画像右参照)等として須崎市より後に出願されていますが、しんじょう君商標登録との類似性を理由とした拒絶理由(以下一部引用)が通知されており、出願人が対応中です。

そこで、本願商標のキャラクターの図形部分(以下「本願商標の図形部分」といいます。)と引用標章の類否についてみるに、両者は、これを詳細に観察すれば、体の色彩、帽子の形態、リボンの有無、表情、手の位置等において相違があるものの、いずれもカワウソをモチーフとしていること、丸い顔と縦長楕円の目、ウエストのくびれがない楕円形の胴、短い手足及び短い尻尾からなり、また、二本足で立っている点において類似しています。

創作物としての類似性を扱う著作権法と、営業標識としての類似性を扱う商標法は類似の考え方が異なりますので、商標として類似するから著作物としても類似するとは言えない(もちろんその逆も成り立ちます)のですが、参考までにご紹介してみました。