商標の先願主義をやめれば問題は解決するか?

素材提供:電広堂

現在の日本の商標制度は先願主義と登録主義が基本です。特許庁に対して先に出願手続を行なった人に権利が付与される制度です。この制度により、「ティラミスヒーロー」事件のように他人が先に使っていた商標を後から勝手に登録して乗っ取ることが可能になるのが問題だと主張する人もいるようです。もっと良い制度がないかを検討してみます。

先に商標を使用した人に権利が与えられる先使用主義はどうでしょうか?何となくフェアーな気がします。しかし、現実には日本全国で使用されているすべての商標を把握することは困難です。たとえば、シンガポールの「ティラミスヒーロー」が日本に本格的に進出し、さあ事業拡大だという時に、「実はその名前は北海道の民宿で2000年から使ってたんですけどー」という人が登場しないとは限りません。先使用者がいつ出てくるかわからない安心できない状況が続くことになります。ここでは、調査費用が十分に出せない小規模企業や個人は不利になります。先願主義であれば、特許庁のデータベースを検索すれば同一・類似の商標が既に出願されてないかはすぐわかります。

また、どちらが先に出願したかの判定は特許庁の記録を見れば一目瞭然ですが、どちらが先に使用していたかの判定は困難なこともあります(特に使用開始時期が大昔である場合)。争いがあった時には、裁判ということになりますが、ここでも、裁判費用を潤沢に使える大企業が有利になり、小規模企業や個人は裁判費用を捻出できないために泣き寝入りということにもなりかねません。

これに対して、先願主義では、10万円程度の費用をかけて先に出願さえしておけば、どんな大企業にも対抗できます。先願主義は小企業や個人に優しい制度と言えます。

日本をはじめとする多くの国では、先願主義の商標制度を採用していますが、これは各国の特許庁が無能だからではありません。先願主義が(問題がまったくないわけではないが)最も現実的な制度であるからです。

【追記】先願主義(+登録主義)と先使用主義(+無登録主義)の組み合わせについても検討してみます。米国の制度はこんな感じです。連邦レベルでは先願主義ですが、先に使用していた人には登録がなくてもコモンロー(一般慣習法)による権利が生じているので、連邦レベルの商標権が及びません。日本での先使用権は使用により既に周知になっていることが求められますが、その要件がなくなった感じです。このような制度は検討に値すると思います。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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